Tereza Da Praia
- 作曲: BLANCO DE ABRUNHOSA TRINDADE WILLIAM,BLANCO BILLY,JOBIM ANTONIO CARLOS

Tereza Da Praia - 楽譜サンプル
Tereza Da Praia|歌詞の意味と歴史
基本情報
「Tereza Da Praia」は、アントニオ・カルロス・ジョビンとビリー・ブランコの共作によるポルトガル語の歌。1954年、ディック・ファルネイとルシオ・アルヴィスのデュエット録音で広く知られ、サンバ・カンソンの系譜に位置づけられる。タイトルは「海辺のテレーザ」を意味し、都会的な洗練とユーモアが共存する一曲として、リオ・デ・ジャネイロの文化的空気を色濃く湛える。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、海辺の美女テレーザをめぐって語り手たちが軽妙に張り合う構図。互いの自慢や受け流しがユーモアとして機能し、リオの社交とビーチ文化を映す都会派の洒脱さが核となる。直接的な罵り合いではなく、余裕ある言い回しと洒落た小競り合いで描く点が魅力。固有名詞や情景の挿入が、軽快な会話劇のような臨場感を生み出している。
歴史的背景
制作当時のリオはラジオ黄金期とナイトクラブ文化の最盛期。ボサノヴァ誕生前夜の洗練されたハーモニー志向と洒脱な語り口が普及し、ジョビンとブランコのコラボはその潮流を象徴した。都会趣味のサンバ・カンソンとして、耳馴染み良い旋律とウィットを結びつけ、のちのボサ的感性へと通じる表現の土壌を示している。
有名な演奏・映画での使用
代表的録音は1954年のディック・ファルネイ&ルシオ・アルヴィス版。以後もブラジルの歌手・コンボにより再演が続くが網羅的なディスコグラフィは情報不明。対話的デュエットが生む軽妙さはライブでも効果的で、再演時の編成やテンポに幅がある。映画やテレビでの使用例については確証のある資料は情報不明。
現代における評価と影響
本曲はジョビン初期のメロディ運びと、ブランコの機知に富む物語性の好例として、ブラジル大衆音楽史の解説でしばしば言及される。デュエットという形式と都会的ユーモアは現在も色褪せず、往年の名唱の復刻やステージ再現で親しまれる。リオの海辺文化を象徴的に切り取った点も、地域アイデンティティの表象として評価される理由のひとつだ。
まとめ
ビーチのミューズを巡る軽やかな駆け引きを核に、洗練と遊び心を両立させた「Tereza Da Praia」。1950年代リオの空気を封じ込めた快作であり、サンバ・カンソンから新潮流へと連なる橋渡し的な位置づけを持つ。デュエットの妙味と都会的ユーモアは今も有効で、ブラジル音楽の魅力を手際よく伝える入門曲としても推奨できる。