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You Turned The Tables on Me
- 作曲: ALTER LOUIS,MITCHELL SIDNEY D

You Turned The Tables on Me - 楽譜サンプル
You Turned The Tables on Me|楽曲の特徴と歴史
基本情報
You Turned The Tables on Meは、作曲家Louis Alterと作詞家Sidney D. Mitchellによる1936年の楽曲。映画「Sing, Baby, Sing」でアリス・フェイにより初披露され、その後スウィング時代を代表するレパートリーのひとつとして広く知られるようになった。歌詞は恋の力関係が逆転する瞬間をテーマにし、ウィットと切なさを同居させた表現が特徴。ジャズ・ヴォーカル/インスト双方で演奏され、今日までセッションやコンサートの定番として親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
形式は32小節のAABAで扱われることが多く、洗練された旋律線と明快なフレーズ構成が魅力。コード進行は機能和声に基づく循環やセカンダリー・ドミナントを要所に配し、ヴォーカルでも器楽でも物語性のあるフレージングを引き出す。テンポはバラードからミディアム・スウィングまで幅広く、歌詞の含意を活かした緩急の付け方が鍵となる。ブリッジ(Bセクション)は和声の推進力が増し、Aセクションへの帰結で感情の余韻を残す構造が、アドリブ展開やヴォーカルの解釈に豊かな余地を与える。
歴史的背景
1930年代のハリウッドとブロードウェイ/ティン・パン・アレイの結節点で生まれた本曲は、映画からポピュラー・ソングへと波及する当時の産業構造を体現する。Alterは映画や舞台の分野で活躍し、Mitchellもハリウッドで多くの歌詞を手がけた。スクリーンでの初演をきっかけにダンスバンドやジャズ・コンボがこぞって取り上げ、スウィング時代の躍動の中でスタンダード化していった。初出年は1936年、以降、多彩なアレンジで継承されている。
有名な演奏・録音
映画でのアリス・フェイによる歌唱に続き、ベニー・グッドマン楽団(ヴォーカル:ヘレン・ワード)の録音が注目を集め、曲の知名度を押し上げた。さらにテディ・ウィルソン楽団によるビリー・ホリデイの録音は、繊細なタイム感と語り口で本曲の感情的コアを印象づけた名演として語り継がれる。以後も多数の歌手・ジャズ・ミュージシャンにより録音が重ねられ、ヴォーカル曲としても器楽曲としてもレパートリーの定席を占めている。
現代における評価と影響
You Turned The Tables on Meは、恋愛の力学が反転するアイロニカルな歌詞と、語りを支えるクラシカルなソングフォームが相まって、ジャズ教育や現場のセッションで重宝される。歌手にとっては言葉運びとレガートの対比、器楽奏者にとっては旋律的即興と和声的アプローチの両立を学べる教材的価値が高い。配信時代においても名演が再発・再評価され、スタンダードの地位は揺るがない。
まとめ
映画生まれの一曲が、スウィング時代を経て今日まで息長く演奏される理由は、普遍的なテーマと堅牢なソングライティングにある。You Turned The Tables on Meは、ジャズ・スタンダードの王道に位置づけられる名曲であり、ヴォーカル、器楽ともに解釈の幅を示す格好の素材だ。初学者から上級者まで、表現と構成の妙を味わえる楽曲として今後も演奏され続けるだろう。