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アーティスト情報なし

Armageddon

  • 作曲: SHORTER WAYNE
#コンテンポラリー
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Armageddon - 楽譜サンプル

Armageddon|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Armageddonは、サックス奏者ウェイン・ショーターが作曲し、1964年にBlue Noteのアルバム『Night Dreamer』で初録音された楽曲。レコーディングはニュージャージー州のヴァン・ゲルダー・スタジオで行われ、プロデューサーはアルフレッド・ライオン。編成はショーター(Tenor Sax)、リー・モーガン(Trumpet)、マッコイ・タイナー(Piano)、レジー・ワークマン(Bass)、エルヴィン・ジョーンズ(Drums)という鉄壁のクインテットで、アルバムの掉尾を飾るトラックとして収録された。

音楽的特徴と演奏スタイル

ミディアムスローのテンポで、暗色のモーダル感とブルースの陰影が共存するのが特徴。ホーンのユニゾンによる主題は音数を抑え、余白とサスペンスで引き込む。タイナーの四度堆積的なヴォイシングと、ジョーンズのポリリズミックなドライブが奥行きを生み、リズム隊は過度に煽らずに緊張と解放を設計。ショーターの抑制された語り口とモーガンのリリカルなフレージングが対照を成し、全体として静かな炎を宿す演奏美学が際立つ。

歴史的背景

『Night Dreamer』はショーターのBlue Note初リーダー作で、彼の作曲家としての転機を告げた作品群の出発点でもある。ハードバップからポストバップ/モーダルへの移行期に位置し、簡潔な主題と開かれた和声領域を土台に、即興の物語性を前面化するアプローチが明確になった。本曲は、以後の『JuJu』『Speak No Evil』へ連なる作風を先取りし、1960年代中期ジャズの新たな美意識を端的に示す。

有名な演奏・録音

決定的な基準演奏は、やはり『Night Dreamer』のオリジナル・テイクである。ヴァン・ゲルダーのクリアで立体的な録音は、ドラムの空間的な残響やピアノの倍音を活かし、曲の陰影を見事に捉える。以降、同アルバムの各種再発やリマスター(RVG Edition など)でも高い評価を維持し、オーディオ的観点からも鑑賞価値が語られてきた。その他の広く知られたカバーについては情報不明。

現代における評価と影響

Armageddonは、ショーターの「少ない音で深い物語を描く」作曲哲学を学ぶうえで格好の教材とされる。メロディの間合い、ハーモニーの曖昧さを活かすソロ構築、そしてダイナミクスの設計は、現代ジャズの作編曲やアンサンブル運用に大きな示唆を与える。教育現場や研究書でも度々参照され、ステージでの選曲においても、セット全体の色調を落ち着かせる要として機能する。

まとめ

1964年の初演以来、Armageddonは過剰な技巧を避け、構造と余白で語るショーター美学の象徴として愛聴されてきた。端正な主題と開かれた即興空間が織り成す緊張感は、今も色褪せない。