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Tu vuo' fa l'americano

  • 作曲: CAROSONE RENATO
#カンツォーネ
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Tu vuo' fa l'americano - 楽譜サンプル

Tu vuo' fa l'americano|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Tu vuo' fa l'americano」は、作曲レナート・カロソーネ、作詞ニコラ・サレルノ(Nisa)による1956年の楽曲。ナポリ方言で歌われ、軽快なスウィングとブギウギの要素を持つポピュラー曲で、カロソーネ自身のバンドによる演奏で広く知られる。タイトルは「アメリカ人の真似をしたいだろ」という意味を帯び、当時のイタリア社会へのユーモアと風刺を前面に出した代表作である。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、服装や飲み物、ダンス、英語混じりの話し方など、アメリカ文化に憧れて振る舞う若者をからかい半分に描く。見かけのモダンさとは裏腹に、経済的・生活基盤は地元に根ざしたままというギャップを浮かび上がらせ、戦後の消費文化とアイデンティティの揺らぎをコミカルに批評する。皮肉と親しみのバランスが巧みで、風刺歌でありながら親しみやすさを失わない点が魅力だ。

歴史的背景

第二次世界大戦後、イタリアではジャズやスウィング、映画、ファッションを通じた“アメリカ化”が急速に進んだ。カロソーネはナポリの伝統的カンツォーネに、当時流行のジャズやブギウギの語法を組み合わせ、都会的で国際色あるサウンドを築いた。本曲はその潮流を象徴し、流入文化への憧れと距離感を軽妙に表現した時代証言としても価値が高い。

有名な演奏・映画での使用

オリジナル録音に加え、国内外の多数のアーティストがカバーを発表。映画では1999年公開のThe Talented Mr. Ripleyで印象的に用いられ、国際的知名度をさらに高めた。2010年にはYolanda Be Cool & DCUPの「We No Speak Americano」が本曲のフレーズをサンプリングし、ダンスミュージック文脈で再ブレイクを果たしている。

現代における評価と影響

「Tu vuo' fa l'americano」は、イタリア大衆音楽を代表する古典として確固たる地位を持つ。スウィングの躍動感、耳に残るメロディ、方言ならではの語感が普遍性を支え、クラブやヴィンテージ系のイベントでも親しまれる。サンプリングや広告・映像での活用を通じて新世代にも届き、文化批評としての鋭さとエンタメ性の両立が再評価され続けている。

まとめ

戦後イタリアの空気を軽快に切り取った本曲は、風刺と祝祭性を併せ持つ稀有なポップ名曲である。ナポリ方言の言葉遊び、スウィングの推進力、記憶に残るフックが一体となり、半世紀以上を超えて受容範囲を広げてきた。歴史的文脈と現在のポップ文化をつなぐ架け橋として、今なお聴く価値がある。