All The Things You Are verse付き
- 作曲: KERN JEROME

All The Things You Are verse付き - 楽譜サンプル
All The Things You Are verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「All The Things You Are」は、作曲ジェローム・カーン(Jerome Kern)による1939年発表の楽曲で、ブロードウェイ・ミュージカル「Very Warm for May」のために書かれました。作詞はオスカー・ハマースタイン2世。後年はジャズ界で定番となり、セッションや教育現場でも頻出するスタンダードです。本記事の「verse付き」とは、一般的に省略されがちな前置きの“ヴァース(導入部)”を含む形を指し、舞台やボーカル・アルバムでは物語的な流れを与える重要な要素として扱われます。
音楽的特徴と演奏スタイル
魅力は歌心あふれる旋律と、機能和声を巧みに連鎖させた進行にあります。コーラス部はAABA型で、複数の調を巡る設計とサークル・オブ・フィフス的な連結、長3度関係の転調がしばしば指摘されます。ガイドトーンの滑らかなボイスリーディングが有効で、アッパーストラクチャーやトライアド・ペアを用いた即興にも適します。テンポはバラードからミディアム・スイング、ボサ的アプローチまで幅広く、ボーカルではヴァースをルバート、コーラスをイン・テンポという対比もよく用いられます。
歴史的背景
初演当時はミュージカル・ナンバーとして発表されましたが、戦後のジャズ・シーンで急速に普及し、名だたる演奏家が取り上げることでスタンダードとしての地位を確立しました。作曲年は1939年。ハマースタインの詩は理想化された愛を喚起する比喩に富み、ヴァースはその心情を導入する役割を担います。ビバップ期には本曲のコード進行を土台にしたコントラファクト(新メロディ作品)も生まれ、学習曲としての重要性も高まりました。
有名な演奏・録音
代表的な演奏としてしばしば言及されるのは、エラ・フィッツジェラルドのJerome Kern Song Book、サラ・ヴォーン、スタン・ゲッツ、アート・テイタム、オスカー・ピーターソン、キース・ジャレット・トリオなど。チャーリー・パーカーの「Bird of Paradise」は本曲のコード進行を流用した例として知られます。ボーカル作品ではヴァースを含む全体像で録音されることがあり、舞台文脈に近いドラマ性を味わえます。
現代における評価と影響
今日、本曲はジャム・セッションの定番であり、機能和声の学習、ガイドトーンの声部進行、転調処理の訓練に最適な教材として位置づけられます。ボーカリストにとってはヴァースの扱いが表現力の鍵となり、アレンジャーは序盤の調性感の推移や終止の設計を活かして多彩な版を生み出しています。音大カリキュラムや教則本でも標準レパートリーとして取り上げられ、世代を超えて演奏され続けています。
まとめ
「All The Things You Are」は、詩情に富む旋律と高度な和声設計を併せ持つ、歌と器楽の双方で輝く名曲です。ヴァースを含めた形で向き合うと、作品本来の物語性と構成美がより明確になります。演奏家にとっては和声運動の理解を深める絶好の教材であり、聴き手にとっては時代を超えるロマンと気品を湛えたスタンダードとして楽しめるでしょう。