All Through The Night verse付き
- 作曲: PORTER COLE

All Through The Night verse付き - 楽譜サンプル
All Through The Night verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
コール・ポーター作『All Through The Night』は、1934年ブロードウェイ・ミュージカル『Anything Goes』のために書かれたショー・チューン。リフレイン前に朗唱調のヴァースが置かれ、続く32小節AABAのリフレインへ導く構造が本来形。「verse付き」はこの前奏部を含む版を指す。恋情を夜のイメージで品よく描く歌詞を持ち、後年ジャズ・スタンダードとして広く親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律は滑らかな長いフレーズと半音階的な推移が特徴。調性内での副属和音やⅢ度借用など、ポーターらしい洗練が随所に現れる。演奏はヴァースを自由テンポ(ルバート)で置き、リフレインからバラード~ミディアム・スウィングに入るアプローチが定番。歌詞の内的韻律を生かすため、伴奏は軽やかなボイシングと明瞭な語尾処理が好まれる。器楽ではテンションを活かした柔らかなリハーモナイズも有効。
歴史的背景
1930年代のブロードウェイ作品では、ドラマを語る導入としてヴァースが重要だったが、後年のポップ録音では省略も多かった。本曲もその典型で、舞台文脈を保つ「verse付き」か、放送向けの簡潔版かで解釈が分岐。アメリカン・ソングブックの一角として定着し、洗練された都会性と感傷のバランスが、戦前~戦後のダンス・バンドやラジオ時代の嗜好にも合致して長く演奏され続けてきた。
有名な演奏・録音
代表例として、Ella Fitzgerald『Sings the Cole Porter Song Book』(1956)がよく知られる。ほかにもキャバレー/ジャズ両領域で多くの歌手・ピアニストが採り上げ、ブロードウェイ再演版のキャスト録音でも継続的に収録される傾向がある。インストではバラードの抒情性を前面に出す編曲が多く、モダン・ジャズではテンションを増やした和声処理が一般的。具体的な映画使用は情報不明。
現代における評価と影響
都会的で気品ある恋愛歌として、音大やワークショップの歌唱・伴奏教材、ジャズのリハーモナイズ課題にもしばしば選ばれる。ヴァースの語りからリフレインへ空気を切り替える設計は、編曲の教材価値が高く、歌詞理解とフォーム運用の両面で重宝。スタンダード集や歌本にも広く掲載され、セッションではバラード・セットの核として扱われることが多い。
まとめ
『All Through The Night verse付き』は、物語性を担うヴァースと洗練されたAABAが融合した名曲。ミュージカル起源の魅力を活かすならヴァースを含め、バラードで言葉と和声を丁寧に扱うのが鍵だ。出自と形式を理解し、テンポやボイシングを緻密に設計することで、古典のエレガンスを現代のステージでも鮮やかに響かせられる。