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Get Out Of Town verse付き

  • 作曲: PORTER COLE
#スタンダードジャズ
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Get Out Of Town verse付き - 楽譜サンプル

Get Out Of Town verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Get Out Of Town」は、作曲・作詞ともにCole Porterによる楽曲で、1938年のブロードウェイ・ミュージカル『Leave It to Me!』で初出。のちに多くの歌手・奏者に取り上げられ、ジャズ・スタンダードとして定着している。タイトルにある「verse付き」とは、主部(リフレイン)に入る前に置かれる導入部分=前歌(verse)を含む版を指す。ジャズの現場ではverseを省略する演奏も多いが、舞台起源の歌としては物語的・心理的な導入を担う重要要素であり、歌詞のニュアンスを深める。

音楽的特徴と演奏スタイル

一般に32小節のAABA型で解釈されることが多く、短調を軸にした和声運動、半音階的な旋律、入念な転調感が耳を惹く。Porterらしいセカンダリー・ドミナントやトライトーン・サブスティテュートの活用により、滑らかながらも辛口のハーモニーが展開する。テンポはバラードからミディアム・スウィングまで幅広く、歌ものではverseをルバート気味に置き、リフレインからテンポ・インする構成が定番。器楽版ではモーダルな解像でコードを簡素化したり、逆にテンションを積極的に加えて内声進行を強調するなど、編曲の自由度が高い。

歴史的背景

1930年代後半、ブロードウェイとポピュラー音楽は密に結びつき、舞台のヒット曲が標準曲化する流れが強まっていた。本曲もその潮流の中で生まれ、洗練された語彙と都会的な諧謔で知られるPorterの作風を代表する一曲となった。初演時の具体的な歌い手・舞台での配置に関する詳細は情報不明だが、戦後の録音文化の成熟とともにジャズ・シンガー/コンボのレパートリーへと広がり、グレイト・アメリカン・ソングブックの一角として定着していく。

有名な演奏・録音

最も広く参照される一例として、Ella Fitzgeraldの『Sings the Cole Porter Song Book』(1956)が挙げられる。明晰な発音と端正なフレージングで、楽曲の骨格と洒脱さを両立させた名唱として定評がある。以後、数多のジャズ・シンガーや器楽奏者が取り上げ、バラード解釈から歯切れのよいスウィング、ラテン・フィールを加えた版まで多様。映画やドラマでの顕著な使用履歴は情報不明だが、録音史の中での存在感は確固としている。

現代における評価と影響

「Get Out Of Town」は、歌詞の機知と和声の豊かさが等価に輝く教材的価値を持ち、音大やワークショップでも取り上げられることが多い。特にverseの扱いは、物語性の提示やテンポ設定、コード・サブスティテュートの判断を学ぶ好例となる。ライブ現場では、歌詞の辛口の距離感を活かしてクールにまとめる解釈と、叙情を前面に出すスロウ・アレンジが共存。時代や編成を選ばない柔軟性ゆえに、今なおセットリストで息長く愛される。

まとめ

ブロードウェイ発の名曲として、都会的な詞と洗練された和声を兼ね備えた本作は、verse付きで聴くことで物語性がいっそう明瞭になる。歴史的背景と録音史の蓄積、そして現代的なアレンジの受容を踏まえると、ジャズ・スタンダードとしての価値は揺るぎない。初学者はリフレインの形式とコード進行に慣れ、上級者はverseの表情づけやハーモニーの選択で個性を示すと、この曲の魅力が最大化される。