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Just In Time verse付き

  • 作曲: STYNE JULE
#スタンダードジャズ
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Just In Time verse付き - 楽譜サンプル

Just In Time verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Just In Timeは、作曲Jule Styne、作詞Betty Comden & Adolph Greenによる1956年のブロードウェイ・ミュージカル「Bells Are Ringing」から生まれたスタンダード。恋に救われた主人公が「間一髪で」人生を立て直したことを歌う内容で、前口上にあたるヴァース(verse)と32小節AABAのリフレインから成る典型的な形式を持つ。ジャズの現場ではリフレインのみで演奏されることも多いが、「ヴァース付き」版は物語的前提を補い、歌詞の意味をより明快にする。初演はブロードウェイの舞台で紹介され、その後急速にポピュラー/ジャズのレパートリーへ浸透した。曲名どおりの前向きなテーマと覚えやすい旋律が、世代を超えて愛されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

ヴァースは語り口の強い自由なテンポ感で始まり、主人公の孤独や迷いを描いたあと、明快な4/4スイングのリフレインへ接続する。リフレインはAABAの32小節で、循環進行やセカンダリー・ドミナント、ii–Vを生かした運動感のあるハーモニーが特徴。中速〜速めのスイングでの演奏が定番だが、バラードやボサ・ノヴァでも成立しやすい。ヴォーカルではリリックの語感を活かしたレガートと、Aセクション終尾のリズミックな置き方が聴かせどころ。器楽ではメロディの跳躍と分散和音的ラインを活かしつつ、Bセクションでのハーモニーの推進力を用いたソロ展開が王道である。

歴史的背景

本曲はStyne–Comden–Greenの黄金トリオによる「Bells Are Ringing」(1956年初演)の中核曲の一つ。ブロードウェイではジュディ・ホリデイとシドニー・チャップリンによって紹介され、1950年代後半のアメリカ音楽界で広く知られるようになった。1960年には同作品が映画化され、楽曲もスクリーンで再び注目を集める。舞台発のポピュラー曲がジャズの現場に取り上げられる典型例として、歌手・バンド双方のレパートリーに定着し、米国大衆歌の定番曲群(いわゆるスタンダード)の一角を占めるに至った。

有名な演奏・録音

トニー・ベネットのレパートリーとして知られ、ライヴでもたびたび取り上げられてきた。フランク・シナトラはアルバム「Come Dance with Me!」で快活なスイング版を残し、曲のイメージを決定づけた一人である。ブロードウェイ・オリジナル・キャスト録音や、映画版「Bells Are Ringing」での歌唱も資料的価値が高い。以後、多くのジャズ・ヴォーカリストとコンボ/ビッグバンドが録音し、器楽曲としても頻繁に演奏されるようになった。名演の共通点は、ヴァースの物語性とリフレインの推進力を対比的に描き出すアレンジにある。

現代における評価と影響

現在もジャム・セッションやライヴで定番曲として親しまれ、音大・専門学校の教材やスタンダード集にも多く収録されている。ヴァースを含めて演じることで、物語性と歌詞解釈が深まり、ヴォーカリストの表現力が問われる一方、インストでもクリアなフォームと心地よいコード進行が即興素材として機能する。「ヴァース付き」版は古典的上演様式への関心を呼び起こし、歴史的背景を踏まえた再演・再解釈の潮流にも寄与している。

まとめ

Just In Timeは、ヴァースとAABAのリフレインが物語と推進力を両立させる名作。ブロードウェイ発の魅力とジャズ的洗練が融合し、世代を超えて演じられてきた。ヴォーカルは言葉と旋律の自然な運びを、器楽は明解なハーモニー進行を武器に据えることで、曲本来の明るさとカタルシスが際立つ。歴史・構成・名演の文脈を踏まえ、「ヴァース付き」での上演にも挑みたい一曲である。