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My Foolish Heart verse付き

  • 作曲: YOUNG VICTOR POPULAR
#スタンダードジャズ
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My Foolish Heart verse付き - 楽譜サンプル

My Foolish Heart verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「My Foolish Heart」は、映画『My Foolish Heart』(1949)に由来するバラードで、以後スタンダードとして広く歌われ演奏されてきました。一般に作曲はVictor Young、作詞はNed Washingtonとして知られます(入力の作曲表記は「YOUNG VICTOR POPULAR」。“POPULAR”の意図は情報不明)。形式は32小節AABAで、歌い出しに導入部としての“verse(ヴァース)”が置かれるのが本来の形。多くの演奏ではヴァースが省かれがちですが、「verse付き」では物語の心情導入が明確になり、続くコーラス部分の情感がいっそう深まります。テンポはバラードが基本で、歌唱・器楽ともにレガートのフレージングと繊細なダイナミクスが重要です。

音楽的特徴と演奏スタイル

コーラスはAABAの典型的スタンダード形式。緩やかな進行の中に半音階的な和声運動や代理和音が折り重なり、終止感に甘くほろ苦い余韻を残します。歌手は語り口を重視し、ブレス位置と韻律のコントロールで“愚かな心”の揺れを描写。器楽ではルバートでヴァースを提示し、コーラスから拍を明確にする解釈が定番です。ピアニストは9thや13thを含む拡張和音、裏コードのさじ加減で色彩を調整し、ベースは長い音価で支えつつ要所で経過音を挿入。ドラマーはブラシ中心で空間を活かします。ヴァースを含める場合、序章→本編というドラマトゥルギーが成立し、物語性の高いセット構成に適します。

歴史的背景

本曲は1949年公開の同名映画の主題歌として発表され、アカデミー賞歌曲賞にノミネート(受賞は逃す)。映画音楽としての出自ながら、メロディの普遍性と歌詞の内省的な世界観が評価され、ジャズ歌手・奏者の定番レパートリーになりました。戦後のポピュラーとジャズが接近した流れのなかで、映画発スタンダードがクラブやラジオを介して定着していく好例といえます。

有名な演奏・録音

特筆すべきはBill Evans Trio。1961年のVillage Vanguard録音で「Waltz for Debby」冒頭を飾る演奏は、繊細なタッチと三者対話の美学で名高いです。さらにKeith Jarrett Standards Trioによるライヴ・アルバム「My Foolish Heart: Live at Montreux 2001」は、タイトルにも掲げられた決定的名演。ヴォーカルではTony Bennett & Bill Evans(1975)の親密なデュオ解釈が知られ、Chet Bakerも歌・トランペット双方で数多く取り上げています。いずれもテンポはゆったりとし、旋律美を最優先に据える点が共通します。

現代における評価と影響

今日でもジャズ教育現場やセッションで頻繁に扱われる標準的バラードで、歌詞の内面描写と和声の豊かさが、世代を超えて解釈の余地を提供しています。ヴァースを演奏に組み込む試みは近年再評価が進み、物語の導入としての機能や、セット内の緩急設計に有効とされます。配信時代においても、名演の数々が聴取可能でリファレンスが共有されやすく、解釈の蓄積がさらに進んでいます。

まとめ

「My Foolish Heart」は、映画由来の旋律美と濃密な感情表現が融合した不朽のスタンダードです。ヴァースを含めることで物語性が際立ち、歌唱・器楽ともに表現の幅が拡張します。入力上の作曲表記に“POPULAR”が含まれる理由は情報不明ですが、実演の現場ではVictor Young作曲として広く定着。歴史と名演に裏打ちされた本曲は、今後もバラード表現の指標であり続けるでしょう。