My Romance verse付き
- 作曲: RODGERS RICHARD

My Romance verse付き - 楽譜サンプル
My Romance verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「My Romance」は、作曲家リチャード・ロジャース、作詞家ロレンツ・ハートによる楽曲。1935年のブロードウェイ・ミュージカル『Jumbo』のために書かれ、のちにジャズ・スタンダードとして定着した。ここで言う“verse付き”とは、多くの録音で省略されがちな前置きの短い導入部(ヴァース)が本編のコーラス前に付く版を指す。ヴァースとコーラスを併せて理解することで、歌詞と物語性のつながりが一層明瞭になる。
音楽的特徴と演奏スタイル
AABA型の32小節構成が広く用いられ、柔らかな旋律線と機能和声に基づく循環進行が魅力。ヴァースは自由なテンポで語りかけるように始まり、コーラスに入ると抒情的なバラード、あるいはミディアム・スイングへ展開することが多い。ワルツ解釈や半音階的なリハーモナイズも定番で、歌と器楽ソロの双方に映える。終結ではタグや保続音を活かしたフェイドアウト的処理もよく見られる。
歴史的背景
ロジャース&ハートは1930年代のブロードウェイを代表する名コンビで、『Jumbo』はサーカスを題材にした大型舞台作品。本曲は当時のショー・チューンの伝統に則り、物語の心情を導入するヴァースと、独立して親しまれるコーラスから成る。舞台発表後、スウィング期からモダン期を通じて多くのジャズ奏者に取り上げられ、レパートリーの核として受け継がれてきた。
有名な演奏・録音
代表例として、エラ・フィッツジェラルド『Rodgers & Hart Song Book』(1956)、ビル・エヴァンス・トリオ『Waltz for Debby』(1961, Village Vanguard ライブ)が広く知られる。映画『ビリー・ローズのジャンボ』(1962)ではドリス・デイの歌唱で用いられ、ポピュラー分野でもカーリー・サイモン(1990)などが録音している。これらはバラードからスイング、ワルツまで多彩な解釈の範例となっている。
現代における評価と影響
歌詞の普遍的なロマンス観と、アドリブしやすい明快な和声構造により、現在もセッションや音大教材の定番。ヴァースから歌う編成は少数派ながら、アルバムの物語性やコンサートの起伏づくりに活用される。ボーカル、ピアノ・トリオ、ギター・デュオなど編成を問わずレパートリー化が進み、スタンダード学習の出発点としても支持されている。
まとめ
『My Romance』は、舞台起源の洗練とジャズ的自由度を兼ね備えた不朽の名曲である。ヴァース付きの形を知ることで、歌詞と旋律の関係性がより鮮明になり、演奏解釈の幅も広がるだろう。歴史と名演に触れつつ、自身のテンポやリハーモナイズで個性を引き出したい一曲である。