September Song verse付き
- 作曲: WEILL KURT

September Song verse付き - 楽譜サンプル
September Song verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「September Song」は、作曲クルト・ヴァイル、作詞マクスウェル・アンダーソンによる1938年の楽曲。ブロードウェイ・ミュージカル『Knickerbocker Holiday』で俳優ウォルター・ヒューストンが初演し、のちにポピュラー/ジャズ双方で広く親しまれるスタンダードとなった。「verse付き」とは、コーラス前に置かれる前歌(バース)を含む版を指し、物語的導入によって語り手の年齢や時間感覚が明確になるのが特徴。一般的にコーラスは32小節のAABA形式で、抒情的なバラードとして演奏される。
音楽的特徴と演奏スタイル
バースは語り口調の旋律と穏やかな和声で始まり、コーラスが入ると印象的な主題が現れる。ジャズの現場では、バースをフリーテンポで情感豊かに提示し、コーラスから拍を明確にして演奏する流れが定番。テンポは遅めのバラードが中心で、歌詞の間合いを活かすためのルバートやブレス・コントロールが要所となる。キーは歌手や編成に合わせて移調されることが多く、Aパートでは主題の動機を繰り返し発展させ、Bパート(ブリッジ)で和声の推移感を活かしたフレーズ構築が求められる。バースを省略すると叙情の導入が薄れるため、「バース付き」を選ぶことで曲全体の物語性が大きく強化される。
歴史的背景
ヴァイルはドイツ出身で、1930年代に米国へ移住。劇作家アンダーソンと組んだ『Knickerbocker Holiday』は17世紀のニューアムステルダムを舞台とする政治風刺劇で、その中で「September Song」は人生の秋を見つめる成熟した視点から歌われるナンバーとして書かれた。発表当時から印象的なメロディと普遍的なテーマで注目を集め、戦後はクラブやレコーディングで取り上げられる機会が増加。こうしてブロードウェイ発のナンバーがジャズ・スタンダードとして定着していった。
有名な演奏・録音
初演者ウォルター・ヒューストンのキャスト録音は、劇中歌としての語りを強く残す重要資料。フランク・シナトラはアルバム『September of My Years』(1965)で格調高いバラード解釈を示し、後世の歌唱モデルとなった。ウィリー・ネルソンは『Stardust』(1978)でカントリーの質感を織り交ぜながらも標準的なフォームを踏襲し、ジャンル横断的な魅力を提示。これらを起点に、ボーカルだけでなく多くのジャズ・インストゥルメンタリストもレパートリーとして採り上げ続けている。
現代における評価と影響
「September Song」は、年齢と時間を主題に据えた成熟のバラードとして、ライブやリサイタルの定番に位置づけられる。バースの有無で表現の密度が大きく変わる代表例として、歌唱解釈やアレンジ研究の題材にも適する。教育現場でも、歌詞のディクション、長いフレーズ運び、ダイナミクス設計を学ぶ格好のテキストとして評価が高い。映像作品での使用例は多数あるが、本稿で網羅的なリストは情報不明とする。
まとめ
ブロードウェイに起源を持ちながら、ジャズ・スタンダードとして普遍化した「September Song」。バース付き版は物語性と時間感覚を豊かにし、曲の核にある“成熟の叙情”を伝えるのに最適だ。歴史的背景を踏まえ、テンポやフレージング、ダイナミクスを丁寧に設計すれば、世代やジャンルを越えて響く解釈に到達できるだろう。