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Take The A Train verse付き

  • 作曲: STRAYHORN BILLY
#スタンダードジャズ
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Take The A Train verse付き - 楽譜サンプル

Take The A Train verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Take The A Train」はSTRAYHORN BILLY(ビリー・ストレイホーン)作曲のジャズ・スタンダードで、デューク・エリントン楽団のテーマ曲として広く知られます。タイトルはニューヨークの地下鉄A系統を指し、ハーレム方面(シュガー・ヒル)へ向かう列車に乗る、という都市の躍動を象徴する内容です。通常は器楽演奏が多い一方、ボーカル用には前置きの“ヴァース(verse)”が存在し、物語的な導入から有名なリフレインへ橋渡しします。歌詞の全文は本稿では扱いませんが、都市の移動と出会いを軽快に描くのが骨子です。作詞者や初出の詳細クレジットは録音ごとに異同があり、統一情報は情報不明とします。初録音・広範な普及の契機は1941年とされます。

音楽的特徴と演奏スタイル

典型的な32小節AABA形式で、明快な主題とスウィング・フィールが核。特有の上行フレーズとリズミックなリフが機関車の推進力のような印象を与えます。アレンジではブラスのコール&レスポンス、サックス・セクションのソリ、ピアノのコンピングが躍動感を支え、テンポは中速から速めまで幅広く取り上げられます。ボーカル版のヴァースは静かな語り口で始まり、リフレインに向けて緊張感を高める構造。インプロヴィゼーションではII–V進行に基づくビバップ的語法から、スウィングのリックまで相性がよく、ソロ回しの自在さも長寿命の理由です。エンディングは有名なタグやリットでまとめる版が多く、ジャムでも合図が通じやすいのが特徴です。

歴史的背景

1941年、放送使用料を巡る業界事情(ライセンス問題)を背景に、エリントン楽団は新たなレパートリーを必要としていました。そこでストレイホーンの書いた本曲が採用され、楽団のテーマ曲として一気に認知を拡大。第二次世界大戦期のアメリカで、都市のモダニティと黒人文化の象徴として機能し、ジャズの大衆的地位を高める一助となりました。ニューヨークの地名や路線を含む題名は、聴き手に具体的な都市景観を喚起し、ジャズを“都会の音楽”として印象付けました。

有名な演奏・録音

決定的なのはデューク・エリントン楽団による1941年前後の録音で、鮮烈なテーマ提示とアンサンブルが教科書的な完成度を誇ります。以後、同楽団の多数のライブ録音で聴けるほか、エラ・フィッツジェラルドらのボーカル版も普及に寄与しました。ヴァースを明確に歌う録音は相対的に少ないものの、採用例では導入からのダイナミクス設計が聴きどころ。器楽ではテンポの選択やブラスの咆哮、ソロの語法で個性が表れ、世代を超えて名演が更新され続けています。

現代における評価と影響

本曲は入門者からプロまで共通言語となるスタンダードで、音大やワークショップでも頻出。ジャム・セッションでは合流が容易で、バンドのサウンド・チェック曲としても機能します。メディアや舞台で“ニューヨークらしさ”を喚起する定番音楽として使われることも多く、教育・娯楽の両面で存在感は不変。ヴァース付きの演奏は物語性を補強し、ステージ構成上のコントラストを与える選択肢として再評価が進んでいます。

まとめ

「Take The A Train」は、都市のスピード感を音で描く象徴的スタンダード。AABAの明快さとアレンジの自由度、ヴァースの語り口が、今日まで演奏者と聴き手を惹きつけています。歴史的背景を踏まえた名演と併せて、ヴァース付きのボーカル版も聴き比べることで、楽曲の立体的な魅力がいっそう際立つでしょう。