That Old Feeling verse付き
- 作曲: FAIN SAMMY

That Old Feeling verse付き - 楽譜サンプル
That Old Feeling verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
That Old FeelingはSammy Fain作曲、作詞はLew Brownによる1937年の楽曲。アメリカン・ソングブックを代表するスタンダードとして広く歌われ、器楽演奏でも定番化している。タイトルにある「verse付き」とは、通常のサビ(refrain)前に置かれる前歌=ヴァースを含む版を指す。ヴァースは物語の状況や心情を静かに導入し、続く32小節の本体へ滑らかに橋渡しする役割を担う。多くの近代的録音では省略されがちだが、物語性を重視する歌唱では重要な要素である。
音楽的特徴と演奏スタイル
本体はAABAの32小節形式。緩やかなバラード〜ミディアム・スイングで取り上げられることが多く、循環的な和声進行やセカンダリー・ドミナントを活用した流麗なコード展開が特徴だ。旋律は息の長いフレーズで、レガートの歌唱やホーンのカンタービレ奏法と相性がよい。ヴァースはリタルダンドや自由なルバートを許容し、伴奏は薄く和声を支えるのが通例。インスト演奏では、ヴァースを短い自由導入として扱い、サビでテンポを確立するアレンジがよく見られる。
歴史的背景
楽曲は1937年公開の映画「Vogues of 1938」で披露され、当時のポピュラー・ソング市場で広く知られるようになった。ブロードウェイ〜Tin Pan Alleyの伝統を受け継ぎ、映画がヒット曲を生む回路の中で浸透。第二次大戦期以降はビッグバンドや小編成コンボ、そして名歌手たちのレパートリーに定着し、ジャズ・スタンダードとして演奏文脈が拡張していった。ヴァースを持つ設計は同時代の多くの作品と共通し、当時の劇場的語り口を今に伝える。
有名な演奏・録音
映画での披露以降、多数の録音が生まれた。特にフランク・シナトラの解釈は、繊細なフレージングで楽曲の甘美なノスタルジーを際立たせ、代表的名唱として知られる。ジャズではチェット・ベイカーの「Chet Baker Sings」に収められた歌唱版が人気で、柔らかなトーンと自然なレガートがメロディの魅力を再確認させる。これらの録音はヴァースを省略する場合もあるが、近年はライヴでヴァースを復活させる歌手もおり、多様なアプローチが共存している。
現代における評価と影響
That Old Feelingは、スタンダード教育の文脈で今なお頻繁に取り上げられ、ジャズ・ヴォーカルと器楽の両面で基礎曲として評価される。ヴァースを含む版は物語性や時代感を色濃く伝え、レパートリーに温かいヴィンテージ感を加える手段として重宝される。スタジオ録音では省略版が実用的だが、コンサートや芝居仕立てのステージではヴァースが演出的効果を発揮。こうした柔軟性が、曲の寿命を長らく支えてきた。
まとめ
Sammy FainとLew Brownによる本曲は、映画発のポピュラーソングからジャズ・スタンダードへと発展し、ヴァースの有無によって多彩な表情を見せる。AABAの端正な構造、歌いやすく記憶に残る旋律、豊かな和声は、世代を超えて演奏者と聴衆を魅了し続けている。ヴァース付きで取り組むことで、作品本来の語り口と情緒をより深く味わえるだろう。