They Can't Take That Away From Me verse付き
- 作曲: GERSHWIN GEORGE,GERSHWIN IRA

They Can't Take That Away From Me verse付き - 楽譜サンプル
They Can't Take That Away From Me verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
作曲はジョージ・ガーシュウィン、作詞はアイラ・ガーシュウィン。1937年公開の映画『Shall We Dance(踊らん哉)』でフレッド・アステアが披露し、アカデミー歌曲賞にノミネートされた。恋人の面影を愛おしく数え上げるリフレインが核だが、演奏前に置かれる短い導入部(verse)が存在し、物語的な前振りと和声的助走の役割を担う。多くの録音で省略されがちだが、曲の情感と文脈を補う重要なパートとして、演奏家によっては重視される。
音楽的特徴と演奏スタイル
標準的な32小節AABA形式のリフレインに、自由テンポで語るように歌うverseが付随する。リフレインはスウィングの中庸テンポが定番で、フレーズの末尾でさりげなくリズムを溜める解釈が映える。和声は副次ドミナントや半音階的進行を用い、滑らかな循環感がメロディの叙情を支える。キーは歌手・編成により可変。ヴォーカルではリフレイン頭のモチーフを抑制的に出し、後半でダイナミクスを開く構成が効果的。インストではブラシを生かしたトリオや、ウッドベース主導の2ビートへの揺れが定番。
歴史的背景
1930年代ブロードウェイ/ハリウッドで活躍したガーシュウィン兄弟の代表的スタンダードで、いわゆるグレイト・アメリカン・ソングブックの中核曲。映画『Shall We Dance』での初出後、瞬く間にジャズ・レパートリーに定着した。ジョージ・ガーシュウィンは1937年に逝去しており、本作は晩年の成果のひとつでもある。のちに1949年の映画『The Barkleys of Broadway』でも再登場し、スクリーンを越えてライヴやレコーディングの現場に広がっていった。
有名な演奏・録音
初演のフレッド・アステア(1937)に続き、フランク・シナトラ(1954『Songs for Young Lovers』)、エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング(1956『Ella and Louis』)、ビリー・ホリデイ(1957『Songs for Distingué Lovers』)が名唱を残した。器楽ではオスカー・ピーターソンのガーシュウィン集が定番的評価を得る。近年ではトニー・ベネット&ダイアナ・クラール(2018『Love Is Here to Stay』)など、世代を超えて新録が続く。各演奏でverseを入れるか、省略するかの選択も聴きどころだ。
現代における評価と影響
本曲はヴォーカル入門から上級者の表現教材まで広く用いられ、セッションやレパートリー本に常備される。恋慕を静かに描くテキストと、柔らかなスウィング感は時代を超えて親和性が高く、ポップスや映画・TVの文脈でもたびたび引用・カバーされる。verseを敢えて復活させる解釈は、楽曲の物語性を強調し、歌詞の行間を立ち上げる手法として評価が高い。
まとめ
They Can't Take That Away From Meは、叙情的メロディと洗練された和声、そして物語の扉となるverseが三位一体となった不朽のジャズ・スタンダードである。映画発の名曲としての格と、無数のカバーが示す普遍性を併せ持ち、今なお演奏家の創意に応える余白を残す。verse付きで取り上げることで、楽曲の感情曲線はより豊かに完結する。