With A Song In My Heart verse付き
- 作曲: RODGERS RICHARD

With A Song In My Heart verse付き - 楽譜サンプル
With A Song In My Heart verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
リチャード・ロジャース作曲、作詞はロレンツ・ハート。1929年のブロードウェイ・ミュージカル『Spring Is Here』の歌曲として初出し、のちにジャズ・スタンダード化。タイトルの“verse付き”は、コーラス前に置かれる語り口調の導入部(ヴァース)を含めて演奏・収録する版を指す。今日では省略されることも多いが、物語的な前振りと和声の伏線が曲想を大きく深める。
音楽的特徴と演奏スタイル
ヴァースは自由なテンポで語るように始まり、続くコーラスで伸びやかな主題が広がる。ジャズではバラードからミディアム・スウィングまで幅広く演奏され、ヴァースをルバートで置き、コーラスでテンポ・インという設計が定番。リハーモナイズや転調的処理、タグを加えたエンディングなど、歌伴・器楽ともにアレンジの余地が大きい。
歴史的背景
発表当時は舞台で親しまれ、その後もアメリカのポピュラー音楽の文脈で息長く歌われた。1952年には映画『With a Song in My Heart』が公開され、主人公の歌唱をジェーン・フローマンが吹き替え、曲名自体が作品名となったことで再評価が進む。以降、ブロードウェイ発の名曲として国際的に浸透した。
有名な演奏・録音
代表例として、エラ・フィッツジェラルドが『Rodgers & Hart Songbook』で取り上げた歌唱は参照頻度が高い。映画版での歌声を務めたジェーン・フローマンの録音も歴史的価値がある。加えて、フランク・シナトラほか多くのボーカリスト、ピアノ・トリオやビッグバンドなど器楽陣にも広くレパートリー化している。
現代における評価と影響
セッションやボーカル・リサイタルでの定番として位置づけられ、ジャズ教育の教材にも採用されることが多い。ヴァースを活かす編成や序奏として配置する工夫により、物語性を備えたステージングが可能になる点も評価される。配信時代でも名演の聴取が容易で、新規リスナーの入口曲として機能している。
まとめ
With A Song In My Heartは、コーラスだけでも完成度が高いが、verse付きでこそ原曲の設計思想が立ち上がる。舞台由来の語りと、普遍的なメロディの結合。その二層構造が本曲を時代を超えるスタンダードへと押し上げたと言える。まずはヴァースから始める版と通常版を聴き比べ、表情の差を確かめたい。