Tangerine verse付き
- 作曲: SCHERTZINGER VICTOR

Tangerine verse付き - 楽譜サンプル
Tangerine verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Tangerine」は、作曲Victor Schertzinger、作詞Johnny Mercerによるポピュラー・ソングで、1942年公開のハリウッド映画『The Fleet’s In』のために書かれた一曲。もともと前置きとなる“ヴァース(verse)”を持ち、そこから本編のリフレインへ導く構成が原型である。今日出回る多くの演奏や譜面ではヴァースが省略されがちだが、本稿は“verse付き”の形態を前提に、作品の魅力を整理する。
音楽的特徴と演奏スタイル
軽やかなスウィング・フィールに乗る流麗な旋律と、言葉のアクセントを生かしたメロディ・ラインが特徴。ヴァースは語り口調の穏やかな導入で、和声も落ち着いた進行を取り、続く本編で一気に開放感を描く。歌唱では、ヴァースで物語の情景を丁寧に語り、リフレインでレガートとスウィングのバランスを取るのが要点。器楽演奏でも主題の歌心を保ち、後半でブルース・フィーリングやスキャット、対位的アドリブを織り込むアプローチがよく合う。キーは演奏者や編成により可変。
歴史的背景
本作は第二次世界大戦期の米国で量産された映画音楽の流れに位置し、作曲家で映画監督でもあったSchertzingerと、比類なき語感を持つ作詞家Mercerのコラボレーションによって生まれた。同じ映画には「I Remember You」も収められ、両曲ともに劇場外で広く親しまれるようになった。ビッグバンド興隆期の空気を反映し、ダンスホールやラジオでの需要に支えられてレパートリー化が進んだ。
有名な演奏・録音
劇場公開と並行して、Jimmy Dorsey & His Orchestraによる録音が大きなヒットとなり、一般層へ浸透した事でスタンダード化に拍車が掛かった。以後、ビッグバンドから小コンボ、ヴォーカル、ラテンやバラード調の編曲まで、多様なアレンジで録音が重ねられている。映画版での演奏とレコード・ヒットの相乗効果が、曲の普及を決定づけた。個別のチャート順位などの詳細は情報不明。
現代における評価と影響
現在もジャズ・スタンダードとしてセッションやリサイタルで取り上げられ、特に歌詞の妙味と印象的なリフレインが評価される。ヴァースまで含めて演奏することで歌詞の物語性が補強され、曲の情感が一段と明確になる点が再注目されている。教育現場では、英語詞の発音とスウィングの関係を学ぶ教材としても有用で、アレンジャーにとっては導入(ヴァース)から本編へ橋渡しする設計の好例といえる。
まとめ
映画発のポピュラー・ソングとして生まれ、ジャズ界で磨かれてきた「Tangerine」。verse付きで向き合えば、作詞作曲の意図が立体的に伝わる。歌でも器楽でも、端正なメロディとスウィングの心地よさを味わえる一曲だ。