There Will Never Be Another You verse付き
- 作曲: WARREN HARRY, GORDON MACK

There Will Never Be Another You verse付き - 楽譜サンプル
There Will Never Be Another You verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
There Will Never Be Another Youは、作曲ハリー・ウォーレン、作詞マック・ゴードンによるジャズ・スタンダード。1942年公開の映画「Iceland」で初披露された楽曲として知られる。ここで扱う「verse付き」とは、一般に省略されがちな導入部(ヴァース)を含む形式を指し、物語的な前振りから本編のリフレインへと橋渡しする重要な役割を担う。キーやテンポ設定は演奏者により多様で、ボーカル、インスト双方で広く親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
32小節構成の典型的な歌物で、循環するII–V進行や副次ドミナントが豊かに用いられ、アドリブの教材としても定評がある。メロディはシンプルながら起伏に富み、スウィングの中で語りかけるような歌唱や、レガート重視のアドリブに適する。verseは自由なテンポや簡潔な伴奏で提示されることが多く、歌詞世界への導入として機能する。テンポはミディアム・スウィングが定番だが、バラードやボサ・ノヴァ解釈も一般的で、編成に応じた柔軟なアレンジが可能だ。
歴史的背景
本曲は20世紀フォックス製作のミュージカル映画「Iceland」(1942)に端を発し、戦時下の大衆娯楽の文脈で世に出た。公開後、ジャズ・ミュージシャンによる解釈を通じてレパートリー化が進み、戦後のクラブ・シーンや録音で急速に普及。やがて標準的な教材曲として定着し、現在も理論学習やアドリブ実践の初期段階で取り上げられることが多い。
有名な演奏・録音
映画内ではジョーン・メリルが紹介者として知られる。その後、チェット・ベイカーの歌唱とトランペットによる録音は入門者にも親しまれ、スタン・ゲッツらサックス奏者の解釈はメロディとハーモニーの対話を示す好例として参照される。録音史は膨大で、年代・バージョンの網羅は情報不明だが、ジャズを代表する多くの奏者がレパートリーに組み込んでいる。
現代における評価と影響
ジャム・セッションの常連曲として、基礎的なII–V運用やターンアラウンドの練習に最適と評価されている。ボーカル分野では、verseを含めるか否かでストーリーテリングの印象が大きく変わる点が再評価され、歴史的文脈を踏まえた上演も増加。配信時代には多様なテンポ・編成の録音が容易に比較でき、学習・鑑賞の両面で価値が高い。
まとめ
映画発の名曲は、ジャズの語法に溶け込み普遍的なスタンダードへと成長した。verse付きの構成は、歌詞の情景や感情の起点を明瞭にし、リフレインの魅力を一層引き立てる。学習者から愛好家まで、構造と物語性の両輪で楽しめる一曲である。