Them There Eyes verse付き
- 作曲: PINKARD MACEO, TAUBER DORIS, TRACEY WILLIAM G

Them There Eyes verse付き - 楽譜サンプル
Them There Eyes verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
1930年に発表されたスタンダード「Them There Eyes」は、メイシオ・ピンカード作曲、ウィリアム・トレーシーとドリス・トーバー作詞のポピュラー歌曲で、現在は代表的なジャズ・レパートリーとなっている。「verse付き」とは、本編のサビ(いわゆるchorus)に入る前の導入パート=ヴァースを省かずに演奏する版を指し、物語の状況を示す役割を担う。歌詞全文は掲載しないが、恋の高揚感を軽やかに描く内容で、多くの歌手に愛される。
音楽的特徴と演奏スタイル
多くの版で32小節のAABA型として演奏され、跳ねるスウィング感と明るい旋律が特徴。ヴァースは自由度の高い語り口で始まり、テンポを定める前振りとして機能する。コーラスに入るとリズム・セクションが推進力を与え、シンガーは語尾の装飾やスキャットで色付けできる。テンポはミディアムからアップまで幅広く、コンボでもビッグバンドでも映える。器楽陣はブレイクやコール&レスポンスで歌を引き立てると効果的だ。
歴史的背景
ティン・パン・アレー期の作曲様式を背景に生まれ、当初はポピュラー歌物として広がった。その後スウィング時代にかけて多くのジャズ・ミュージシャンが取り上げ、薫り高いメロディと簡潔な和声進行が即興の土台として定着。ラジオやダンスホールで親しまれ、女性歌手のレパートリーとしても人気を博した。出版や初出録音の個別データは情報不明だが、1930年代以降の舞台・レビュー文化とも親和性が高かった。
有名な演奏・録音
ビリー・ホリデイによる名唱は本曲の代表的イメージを確立し、エラ・フィッツジェラルドは華やかなスキャットを交えてスウィンギーに展開。ルイ・アームストロングも独自のフレージングで魅力を引き出した。これらの録音は歌詞付きの魅力を強調しつつ、器楽ソロの受け皿としても機能している。各録音の年やレーベル詳細は情報不明だが、いずれもスタンダード化に大きく寄与した。
現代における評価と影響
今日でもジャム・セッションの定番曲として扱われ、ヴォーカル入門から中級者までの教材曲として取り上げられることが多い。ヴァースを付すことで曲のストーリーテリングが明確になり、舞台やレビュー形式のショウにも適応しやすい。転調のアレンジ、ストップタイム、トレード・フォーの挿入など現代的な工夫とも相性が良く、音域的にも無理が少ないためキー変更で幅広い歌手に対応できる。
まとめ
「Them There Eyes」は、親しみやすい旋律と軽快なスウィング、そしてヴァースに宿る語りの力が共存する一曲である。歌詞の世界観を活かしつつソロ回しで勢いを作る構成が組みやすく、編成やシーンを問わず活躍する。由来の一部に情報不明は残るが、長年にわたり歌手とジャズ・プレイヤーの双方に支持される、普遍的な魅力をもつスタンダードと言える。