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Heaven
- 作曲: ELLINGTON DUKE

Heaven - 楽譜サンプル
Heaven|楽曲の特徴と歴史
基本情報
デューク・エリントンが後期に取り組んだセイクレッド・コンサート群で取り上げられた楽曲。柔らかな旋律美を備え、歌詞付きで歌われることが多い。ビッグバンド、合唱、ソロ・ヴォーカルなど多様な編成で演奏され、宗教音楽とジャズの橋渡しを象徴する一曲として位置づけられている。
音楽的特徴と演奏スタイル
落ち着いたテンポのバラード寄りの設計に、豊かな拡張和声と内声の動きを重ねた書法が映える。メロディは祈りのように静かに上昇し、クライマックスでも過度に劇的にならず敬虔さを保つ。合唱とソロの受け渡し、ゴスペル由来のコール&レスポンス、色彩的なサックス・セクションがよく用いられる。
歴史的背景
1960年代後半、エリントンは教会や大聖堂での公演を通じ、ジャズの精神性を広く提示した。Heavenはとりわけ『Second Sacred Concert』(1968)で重要曲として扱われ、宗教的テキストとジャズ語法の統合を体現した。世俗のクラブから聖堂へ――という場の転換は、ジャズ受容の地平を押し広げた。
有名な演奏・録音
代表的なのは、エリントン楽団による『Second Sacred Concert』の公式ライヴ録音で、スウェーデンの歌手アリス・バブスの澄明な歌唱が知られる。その後はジャズ合唱団、大学ジャズオーケストラ、教会合唱などがレパートリーとして採り上げ、編曲版も多数存在。映画での顕著な使用は情報不明。
現代における評価と影響
今日、本曲は“セイクレッド・ジャズ”の文脈で再演され続け、宗教曲・合唱曲・ジャズ・スタンダードの境界を越える教材的価値も持つ。メロディの覚えやすさと和声の深みが両立し、礼拝からコンサートホールまで場を選ばない柔軟性が評価され、プログラミングの核として重用されている。
まとめ
Heavenは、エリントンの美意識と精神性が結晶したバラードであり、歌と合奏の対話が聴きどころ。記録・上演の蓄積を通じて、セイクレッド・コンサートの枠を超えた独立曲として定着した。作詞者や初出の細部に未詳点はあるが、楽曲のメッセージ性と普遍性は色褪せない。