Night And Day verse付き
- 作曲: PORTER COLE

Night And Day verse付き - 楽譜サンプル
Night And Day verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Night and Dayは作曲家コール・ポーターが1932年に書いた楽曲で、ブロードウェイ・ミュージカル「Gay Divorce」でフレッド・アステアにより初演された。翌1934年の映画「The Gay Divorcee」にも用いられ、以後ジャズ・スタンダードとして定着した。「verse付き」とは、コーラス(リフレイン)前に置かれる本来のヴァースを含む版を指す。今日の演奏ではヴァースを省略してコーラスから始めるケースも多いが、作品のドラマ性を理解するうえでヴァースの存在は重要だ。
音楽的特徴と演奏スタイル
ヴァースは短調寄りの陰影を帯び、語り口調で緊張感を築いたのち、32小節AABAのコーラスへ導く。コーラスは同音反復のメロディが特徴で、持続するドミナント上に半音階的な和声進行が重なり、強い推進力を生む。セカンダリー・ドミナントやディミニッシュ、トライトーン・サブスティテュートによるリハーモナイズが定番で、内声の半音下降を際立たせるアレンジも多い。テンポはミディアム〜アップのスウィングが王道だが、ボサノヴァ解釈も広く親しまれている。ヴァースをルバートで歌い出し、リズムが入るタイミングでコーラスへ着地する構成が舞台様式に適う。
歴史的背景
大恐慌期のニューヨークで洗練と倦怠を併せ持つアーバンな作風で評価されたポーターにとって、本作は代表作の一つ。舞台「Gay Divorce」での成功を受けて映画版でもフィーチャーされ、ブロードウェイ/ハリウッド双方の文脈を跨いで広まった。出版年は1932年。以降、ダンスバンドからモダン・ジャズまで幅広い編成で取り上げられてきた。
有名な演奏・録音
初演者フレッド・アステアの録音は史料的価値が高い。シナトラは複数回録音し、スウィング編成とストリングス編成で異なる魅力を示した。エラ・フィッツジェラルドは「Cole Porter Song Book」で端正な歌唱を残し、オスカー・ピーターソンは「Cole Porter Songbook」でスリリングなピアノ・トリオを聴かせる。ピアノ独奏ではアート・テイタムの超絶技巧版が有名。さらにアントニオ・カルロス・ジョビンとの共演作でのシナトラ版は、ボサノヴァ・アレンジの定番として知られる。
現代における評価と影響
本曲はセッションの常套曲で、教育現場でも和声分析やリハーモナイズの題材として頻出する。ヴァースの有無で物語性が大きく変わるため、舞台文脈を重んじる歌手は原典に忠実な構成を好み、クラブやセッションでは実用性からコーラス開始が選ばれやすい。ジャズのみならずポップスや映画音楽の領域でも引用・再解釈が続き、時代を越えて歌い継がれている。
まとめ
Night and Dayは、陰影あるヴァースと推進力に富むコーラスが対照を成す名曲である。ヴァース付きで聴くとドラマの伏線が明確になり、和声の妙味もより立体的に感じられる。多彩な名演を聴き比べ、構成と解釈の違いを楽しみたい。