My Ideal verse付き
- 作曲: CHASE NEWELL, WHITING RICHARD A

My Ideal verse付き - 楽譜サンプル
My Ideal verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
My Idealは、Richard A. WhitingとNewell Chaseが作曲し、Leo Robinが作詞した1930年の楽曲。穏やかでロマンティックなバラードとして広く知られ、ジャズ・スタンダードとして定着しました。「verse付き」とは、本編(コーラス)前に置かれる物語的なイントロダクション=ヴァースを含めて演奏・歌唱する版を指します。ヴァースは舞台や映画由来のポピュラー・ソングに多く見られる伝統様式で、物語の情景や心情を前振りとして提示し、続くコーラスで主題が展開されます。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲は滑らかな旋律線と繊細なハーモニー進行が魅力。コーラス部はミディアム以下のテンポで歌われることが多く、4ビートのスウィングやバラードでの伴奏が定番です。ヴァースは自由度の高いルバートや控えめな伴奏で情景を描写し、コーラス突入で拍感が明確になります。コードは拡張和音や代理和音との相性が良く、ボーカルはレガートとダイナミクスの対比、器楽演奏では内声処理とロングトーンのコントロールが聴きどころ。版により形式の細部は異なりますが、標準的な32小節規模で扱われることが多い点も実践上の目安です。
歴史的背景
発表は1930年。ティン・パン・アレー最盛期に生まれ、のちのスウィング期、モダン・ジャズ期まで歌い継がれてきました。作曲家Richard A. Whitingは映画音楽やポピュラー・ソングで知られ、共同作曲者Newell Chaseとともに、都会的で洗練された旋律を提示。戦後には再評価が進み、バラード・レパートリーとしての位置が確立します。歌詞は憧憬と理想の恋人像を描き、直接的な告白よりも余韻と含みで情感を伝えるタイプ。ヴァースはこの内面的な独白を導く役割を担い、曲全体の物語性を高めます。
有名な演奏・録音
マージョリー・“マーガレット”・ホワイティング(作曲者Richardの娘)による録音は本曲を戦後に広く知らしめた代表例として言及されます。以降、多数のボーカリストやジャズ奏者が取り上げ、バラードの定番として定着しました。ヴァースは省略されることも多い一方、“verse付き”の演奏は曲の叙情をより深く味わえるため、アルバムやライブで採用される場面があります。その他の具体的な映画やチャート成績の詳細は情報不明です。
現代における評価と影響
My Idealは、スタンダード・バラードの語法を学ぶ教材としても評価が高く、シンガーには言葉運びとブレス設計、器楽奏者にはハーモニー拡張と歌心の両立が求められます。ヴァースを付すか否かの選択は、編成や会場の響き、物語性をどこまで前景化するかという美学的判断にもつながります。近年の再演では、原譜に立ち返った“verse付き”のアレンジが注目され、古典的ポピュラーとモダンな解釈の橋渡し役として再評価が進んでいます。
まとめ
「verse付き」のMy Idealは、前口上としてのヴァースが物語の地平を開き、続くコーラスの抒情をいっそう引き立てます。1930年生まれの名曲は、今日もボーカルと器楽の双方で生き続け、静かな情感と洗練を伝える定番曲として愛されています。