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Moonglow verse付き

  • 作曲: DE LANGE EDGAR EDDIE,HUDSON WILL
#スタンダードジャズ
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Moonglow verse付き - 楽譜サンプル

Moonglow verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Moonglow」は1930年代に広く浸透したジャズ・スタンダード。作曲はWill Hudson、作詞はEddie DeLangeとIrving Millsとして知られます(初演者は情報不明)。本稿の「verse付き」とは、一般に演奏されるコーラス(AABA型の32小節)に先立つイントロダクション的なヴァースが付く版を指します。ヴァースは歌詞の情景を提示する緩やかな前置きで、コーラスに入るとスウィングのグルーヴへ移行。テンポはミディアム・スウィングからバラードまで幅広く、調性は編成や歌手により可変(CやGなど)。

音楽的特徴と演奏スタイル

コーラスはAABAの標準的形式。和声はE7→A7→Dm7→G7…と連鎖するセカンダリー・ドミナントが要で、循環的進行上に半音階的な旋律が乗るのが特徴です。メロディは滑らかな順次進行と甘美な跳躍を併せ持ち、夜景のきらめきを思わせる色彩感を生みます。ヴァースはルバート気味に語るように歌い、コーラスで4ビートへ。インプロではガイドトーンを軸に、トライトーン・サブやクロマチック・アプローチを織り交ぜると調性の推進力が際立ちます。ギターやクラリネット、テナー・サックスのリードでも映えるレガート志向のラインが好相性。

歴史的背景

1933年に発表され、スウィング時代のダンス・バンドで人気を獲得。アメリカのポピュラー音楽がビッグバンド主流だった時期に、都会的でロマンティックな雰囲気をもつバラード〜ミディアム曲として重宝されました。戦後も小編成コンボやジャズ・シンガーの定番レパートリーとして受け継がれ、ヴァースの有無やテンポ感、イントロのアレンジなど、演奏状況に応じた多様な解釈が生まれています。

有名な演奏・録音

ビッグバンドではBenny GoodmanやArtie Shawによる録音が名高く、スウィング期の代表的解釈として親しまれています。ギター/ヴァイオリン中心の欧州ジャズでも取り上げられ、室内楽的な軽快さで魅力を発揮。映画『ピクニック』(1955)では、劇中で用いられた「Moonglow and Theme from Picnic」のメドレー版が大ヒットし、同曲の一般的認知をさらに押し上げました。シンガーによる歌唱版からインスト・アレンジまで、録音は時代とともに豊富です。

現代における評価と影響

現在もセッションで頻出するスタンダードで、学生バンドからプロまで幅広く演奏。セカンダリー・ドミナント連鎖やクロマチックなメロディ処理の教材としても有用で、ヴォーカルではヴァースを生かしたドラマ構成、インストでは柔らかな音色設計が鍵となります。映画・ドラマのサウンドトラックにも適合しやすく、ノスタルジックでロマンティックな空気感を演出する楽曲として評価が定着しています。

まとめ

「Moonglow」は、ヴァースの詩情とコーラスの洗練を併せ持つジャズ・スタンダード。AABAの形と連鎖するドミナント進行が創る心地よい推進力は、歌・器楽のいずれでも映えます。スウィング期の名演から映画『ピクニック』の成功を経て、現代でもなお色褪せない定番曲として愛され続けています。