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Lover verse付き

  • 作曲: RODGERS RICHARD
#スタンダードジャズ
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Lover verse付き - 楽譜サンプル

Lover verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Loverは、作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートの名コンビによる楽曲。1932年公開の映画『恋に恥じらう(Love Me Tonight)』のために書かれ、のちにジャズ・スタンダードとして広く定着した。「ヴァース付き」とは、リフレイン(本体)に先立つ語り口の序唱部=ヴァースを含む版を指す。ヴァースはしばしば省略されるが、作品の語りや情緒を導く重要な前置きであり、曲の全体像を理解するうえで欠かせない。

音楽的特徴と演奏スタイル

ヴァースは自由なテンポ感で始まり、和声の移ろいと語り口が緊張を醸成し、リフレインへ橋渡しする。リフレインは解釈の幅が広く、スウィングの快速テンポからドラマティックなバラード、ラテン寄りのアレンジまで多様に演奏される。旋律は跳躍と順次進行が巧みに交錯し、強い推進力と甘美なカンタービレが共存。ハーモニーは転調感や副属和音の色づけに富み、ソロではモチーフの反復やシーケンス処理が映える。ヴァースを採用する場合、ルバートで語り、リフレインでビートを明確化するコントラスト設計が定番だ。

歴史的背景

ロジャース&ハートはブロードウェイとハリウッドで多くの名曲を生み、Loverもその代表格。大恐慌期のアメリカで、映画音楽は大衆の慰めと洗練の象徴となり、本作もスクリーン発のポピュラー曲がジャズ現場に流入する潮流の中で定着した。劇中では本来ゆったりとした抒情性が際立つが、のちのジャズ界では速度感のあるアレンジが流行し、ダンスバンドからコンボまで幅広い編成で取り上げられた。

有名な演奏・録音

映画版でのジネット・マクドナルドの歌唱がオリジンとして知られる。ペギー・リーは力強い打楽器を伴う劇的な解釈で注目を集め、エラ・フィッツジェラルドはロジャース&ハート・ソングブックで端正かつスウィンギーに再定義した。レス・ポールによる多重録音のインストゥルメンタル・ヒットも象徴的で、ギターの技巧性とアレンジの先進性を示した例としてしばしば引用される。いずれもヴァースの扱いに差があり、曲の性格をどう位置づけるかの指針になる。

現代における評価と影響

Loverは、映画由来のポピュラー曲がジャズ標準曲へ転化した典型例として、教育現場やリサイタルでも取り上げられる。ヴァースを含めるか否かで物語性と緊張感が大きく変わるため、歌手・編曲家にとって構成演出の好教材となっている。録音史の蓄積により、同一素材をテンポ、メーター、ハーモニー処理で多面的に再解釈できることを示す実例としても評価が高い。

まとめ

Lover(ヴァース付き)は、序唱部が物語を起動し、リフレインで旋律美と推進力が開花する楽曲。映画発の抒情からジャズの躍動まで、解釈の幅こそが魅力だ。ヴァースの有無を聴き比べることで、曲の設計思想と表現の可能性が一層鮮明になる。