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I Cover The Waterfront verse付き

  • 作曲: GREEN JOHN
#スタンダードジャズ
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I Cover The Waterfront verse付き - 楽譜サンプル

I Cover The Waterfront verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

I Cover The Waterfrontは、作曲GREEN JOHN(ジョニー・グリーン)、作詞Edward Heymanによる1933年発表の楽曲。ジャズ・ボーカルの定番として知られるバラードで、ここで扱う「verse付き」は、本題(リフレイン)前に置かれる語り口の導入部=ヴァースを含む形態を指す。初出の出版データや舞台初演の詳細は情報不明だが、同年の流行歌として広く普及した事実は周知である。歌詞全文の引用は避けるが、港辺の情景と待ち続ける心情を描く内容が核となり、多くの歌手が情感豊かに解釈してきた。

音楽的特徴と演奏スタイル

ヴァースは自由なテンポで語るように始まり、和声的な陰影を描いて本編へ橋渡しするのが一般的。リフレインは落ち着いたバラード・テンポで演奏され、歌手はブレスや間を生かしつつ、半音階的な進行や切ない転回和音に寄り添う。ピアノやギターは薄いヴォイシングとサステインを重視し、ブラシによるドラムとウォーキングないし2フィーリングのベースが支えるアンサンブルが定番。後半に向けてダイナミクスをわずかに引き上げる、あるいはサビで一瞬のダブルタイム感を差すなど、控えめなコントラスト作りが映える。ヴァースを省略する演奏もあるが、「verse付き」は物語性を強めたい時に好まれる。

歴史的背景

本曲が生まれた1933年は米国の大恐慌期にあたり、ラジオとダンスバンドを中心にポピュラー音楽が慰めと娯楽を提供していた時代である。海辺(ウォーターフロント)を見守る視点という題材は、都市の港湾文化や旅立ちと帰還のイメージと結びつき、当時の聴衆に強く訴求した。題名と同名の書籍や映画が存在する時代的文脈とも相まって、港という風景が楽曲の情緒を一層印象づけたと考えられるが、直接の制作関係についての詳細は情報不明である。

有名な演奏・録音

I Cover The Waterfrontは多くの歌手・楽団に録音され、ジャズ・スタンダードとして定着した。特にバラード表現を得意とするボーカリストの名唱が知られ、Billie HolidayやFrank Sinatraによる録音はしばしば参照される。また、スモール・コンボによるリリカルな器楽版も定番で、ピアノ・トリオやテナー・サックスのバラード・フィーチャーとして取り上げられることが多い。ディスコグラフィの網羅は情報不明だが、1930年代のダンス・バンドから戦後のモダン・ジャズまで幅広く記録が残る。

現代における評価と影響

本曲は教育現場やセッションでも扱われる標準曲で、スタンダード集に掲載される機会も多い。ヴァースを含めるか否かの選択、テンポ設定、間合いの作り方など、歌唱・伴奏双方の成熟度が映えるため、表現力の指標として評価される。歌詞の情景性が高く、映像作品やステージでも雰囲気づくりに適している点も継続的な支持の理由である。配信時代においても、新録やライブでの再解釈が続き、静謐で奥行きのあるバラードの美学を伝え続けている。

まとめ

I Cover The Waterfront(verse付き)は、ヴァースが物語性を深めるバラード・スタンダード。港辺の風景と待望の心情という普遍的テーマを、繊細な和声と柔らかなテンポ感で描き出す。時代を超えて歌い継がれる理由は、余白とニュアンスに宿る表現の自由度にあると言える。演奏者はヴァースの扱いとダイナミクス設計を工夫し、聴き手の内面に届く語り口を目指したい。