Indiana verse付き
- 作曲: HANLEY JAMES F

Indiana verse付き - 楽譜サンプル
Indiana verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
“Indiana”(正式題名は“Back Home Again in Indiana”)は、作曲HANLEY JAMES F(James F. Hanley)による1917年発表の楽曲で、作詞はBallard MacDonald。元来は歌詞を持つポピュラー・ソングで、のちにジャズ・スタンダードとして広く演奏されるようになりました。「verse付き」は、本来の序唱部(ヴァース)を含む形で演奏・歌唱することを指し、多くのジャズ演奏で省略されがちな前口上の一節をあえて導入するスタイルを意味します。
音楽的特徴と演奏スタイル
32小節の標準的なソング・フォームで、しばしばFメジャーで演奏されます。循環進行やセカンダリー・ドミナントを巧みに織り込み、明快なトニック帰結が即興の地平を広げます。スウィングやディキシーランドでは中速で、ビバップ以降は速いテンポでのアドリブ合戦が好まれます。ヴァースは語り口調で穏やかな導入となり、本編(コーラス)に勢いよく橋渡しします。また、本曲のコード進行は名高いコンタファクト「Donna Lee」の基盤としても知られ、アドリブ練習の格好の題材です。
歴史的背景
1910年代のティン・パン・アレー流行歌として出版され、アメリカ中西部の郷愁を歌う内容が共感を呼びました。1920年代以降、ニューオーリンズ/シカゴ系ジャズのレパートリーに組み込まれ、スウィングからビバップまで連綿と演奏されます。特筆すべきはモータースポーツの祭典インディアナポリス500での慣習で、長年にわたり前式典で歌われてきたことにより、地域文化とジャズ/ポピュラー音楽の橋渡し役を担ってきました。
有名な演奏・録音
Louis Armstrongはライヴで頻繁に取り上げ、本曲の活力ある側面を体現しました。インディアナポリス500では、ジム・ネイバーズが長年歌唱し、国民的行事と曲の結びつきを強めました。さらに、ビバップの代表的ナンバー「Donna Lee」は本曲のコード進行に基づく作品として周知で、作曲クレジットはチャーリー・パーカー名義が広く流通する一方、マイルス・デイヴィス作とする見解もあります。網羅的な録音リストは情報不明ですが、世代を超えて数多の演奏家に愛奏されています。
現代における評価と影響
現在もセッションの定番曲として、初中級者の和声・ライン構築訓練から上級者の高速アドリブまで幅広く用いられます。ヴァースを付す演奏は、物語性や歴史的文脈を重視するアプローチとして再評価され、トラディショナル志向のバンドやヴォーカル・ステージでの採用が増えています。教育現場では、基本的な機能和声の運用例と、コンタファクト作法の理解に最適なモデルとして扱われています。
まとめ
“Indiana verse付き”は、発表当初の歌としての魅力と、ジャズ・スタンダードとしての即興性を併せ持つ稀有なレパートリーです。ヴァースを含めて演奏することで物語性が強まり、歴史や地域文化との結節点も鮮明になります。セッション常連曲としての利便性に加え、Donna Leeとの関係が示すように創作の源泉でもあり、今なお学習・鑑賞双方で価値を放ち続けています。