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I Only Have Eyes For You verse付き

  • 作曲: WARREN HARRY
#スタンダードジャズ
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I Only Have Eyes For You verse付き - 楽譜サンプル

I Only Have Eyes For You verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「I Only Have Eyes For You」は、1934年のワーナー映画『Dames』のために書かれた楽曲。一般的なクレジットでは作曲Harry Warren、作詞Al Dubinとされるが、ここでは提供情報に従い作曲者表記を“WARREN HARRY”と記す。ジャズ/ポピュラー領域の代表的スタンダードで、32小節AABA型の本編に先行して、語り口調の導入部「ヴァース(verse)」が付くのが原型である。verse付きの演奏では、自由なルバートを伴うイントロとして扱われることが多く、続く本編で拍感が明確になる。テンポはスロー・バラードが主流だが、スウィング、ボサ・ノヴァなど多様な解釈にも耐える柔軟性を持つ。

音楽的特徴と演奏スタイル

穏やかな下降線や半音階的なつながりを含む旋律が耳に残り、和声は副属和音やII–V進行を軸に端正に展開する。ヴァースは調性感を曖昧に保ちつつ物語を導入し、Aセクションで旋律美が開花、B(ブリッジ)で和声的な転換を作る。ジャズでは、ヴァースをルバートで歌い、AABAに入ってから4/4のスローで歩かせる設計が定番。終止ではフェルマータやリタルダンドを活かして余韻を強調する。リハーモナイズの余地も広く、テンション付与や代理和音による色彩変化が容易で、歌とアドリブの両面で表現の幅が広い。

歴史的背景

本曲は、豪華絢爛な群舞演出で知られるバスビー・バークレーの系譜にあるミュージカル映画の文脈で誕生した。大恐慌期の観客に対し、夢見心地の映像とロマンティックな楽曲が慰撫作用をもたらし、スクリーン初出後はシート・ミュージック、ラジオ、ダンス・バンドを通じて急速に浸透。戦後にはジャズ・クラブの定番となり、ヴォーカル曲としてもインストとしても広く愛奏されるに至った。

有名な演奏・録音

特に評価が高いのがThe Flamingosによる1959年盤で、豊かな残響とコーラスを用いた12/8フィールが夢幻的な世界観を打ち出し、後世の解釈に大きな影響を与えた。アート・ガーファンクルが1975年にヒットさせたカバーも広く知られる。ジャズ・シーンでは多数の歌手やコンボに取り上げられ、ヴァースを省略する演奏と「verse付き」を明示して原型に寄り添う演奏が併存している。映画やテレビでの使用例も多いが、個別の事例は情報不明。

現代における評価と影響

本曲はジャズ教育において歌唱・和声・解釈を総合的に学べる題材として扱われ、ステージでもバラード枠の定番として重宝されている。ドゥーワップ、オールディーズ、ジャズの各文脈で継続的にカバーが生まれ、時代や編成に応じて解釈が更新され続けている点が、その普遍性を物語る。verse付きで演奏することで、映画由来のドラマ性や物語の導入が際立ち、聴き手に鮮やかな起伏を提供する。

まとめ

「I Only Have Eyes For You」は、ヴァースからAABA本編へと弧を描く構成美、歌と和声の融和、そして時代を超えて再解釈される柔軟性が核にある。オリジナルの意匠を尊重する“verse付き”のアプローチは、楽曲の本質—親密で没入的なロマンス—を最も立体的に伝える手段だと言える。