I Got Rhythm verse付き
- 作曲: GERSHWIN GEORGE,GERSHWIN IRA

I Got Rhythm verse付き - 楽譜サンプル
I Got Rhythm verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
I Got Rhythmは、作曲ジョージ・ガーシュウィン、作詞アイラ・ガーシュウィンによる1930年のブロードウェイ・ミュージカル「Girl Crazy」で初演されたスタンダード。ここで言うverse付きは、コーラス(AABAの本体)に入る前の導入部であるヴァースを含む版を指す。多くのジャズ演奏ではヴァースを省くが、舞台・歌唱では情景説明として重要な役割を担う。形式は32小節のAABA、代表的な調はB♭メジャー。英語詞だが、内容の要点のみを扱い歌詞全文は提示しない。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲のコーラス部は、いわゆるリズム・チェンジと呼ばれる和声進行の原型で、A部にI-vi-ii-Vの循環、B部で属和音の連鎖が配される。速めのスウィングからミディアムまで幅広いテンポで消化され、ビバップ以降はトライトーン・サブやセカンダリー・ドミナントの拡張が常套。アドリブではガイドトーンの運動と四度進行の捉え方が鍵となる。ヴァースは自由なテンポで語るように歌い、コーラス突入で一気にスウィングへ転じる対比が魅力で、歌唱版ではダイナミクス設計が聴きどころ。
歴史的背景
1929年の大恐慌後、ブロードウェイは娯楽と活力を提供する場で、本曲はその象徴的存在となった。初演ではエセル・マーマンが強靭なベルティングで喝采を浴び、ガーシュウィン兄弟のジャズ語法と舞台音楽の融合が広く認知される契機に。スウィング時代を経てビバップ期には、和声骨格が即興の教材として再評価され、ジャム・セッションの共通言語として定着した。
有名な演奏・録音
代表的録音には、ルイ・アームストロングのスウィング感あふれる版、エラ・フィッツジェラルドの超絶スキャット(特に1960年代のライヴ)がある。デューク・エリントンのCotton Tail、ソニー・ロリンズのOleo、チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーのAnthropologyなどは本曲進行に基づくコントラファクトとして著名。ピアノではアート・テイタムやオスカー・ピーターソンが高度な再解釈を残し、ビッグバンドから小編成まで録音は枚挙に暇がない。
現代における評価と影響
I Got Rhythmは、ジャズ教育で必修とも言える課題曲であり、リズム・チェンジはブルースと並ぶ基礎進行として世界中のジャムで共有される。歌唱面ではヴァースを含む原型に立ち返る演出が再注目され、舞台作品の文脈理解にも資する。理論書やリアルブックでも標準曲目として扱われ、作編曲や即興指導の出発点となっている。
まとめ
ブロードウェイ発の名曲I Got Rhythmは、ヴァース付きの劇的構成と、AABAの和声骨格がもたらす即興の自由度によって、時代を超えた生命力を保ち続けている。初演以来の歌の魅力と、ジャズ・スタンダードとしての普遍性が両立する稀有な作品であり、聴取と演奏の双方で学びの源泉となる一曲である。