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It's Magic verse付き

  • 作曲: STYNE JULE
#スタンダードジャズ
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It's Magic verse付き - 楽譜サンプル

「It's Magic verse付き|楽曲の特徴と歴史」

基本情報

Jule Styne作曲、Sammy Cahn作詞による「It's Magic」は、1948年公開の映画「Romance on the High Seas」のために書かれたポピュラー・ソング。タイトルにある「verse付き」は、主部のリフレインに入る前に短い導入部(ヴァース)が置かれる版を指し、この作品でも伝統的なアメリカン・ソングブックの作法が踏襲される。映画で初披露され、以後はジャズ/ポップ双方のレパートリーとして広く演奏されてきた。歌詞の全文はここでは扱わないが、恋の陶酔や不可思議な引力を「魔法」に喩えるロマンティックな内容で知られる。

音楽的特徴と演奏スタイル

穏やかなバラード・テンポで歌われることが多く、息の長い旋律線とロマンティックな和声進行が特徴。ヴァースは語り口に近い自由なフレージングで、続くリフレインで大きく歌い上げる構図が効果的である。ジャズではピアノ・トリオやギター・デュオによる親密な伴奏、あるいはストリングスを加えた華やかな編曲まで幅広く、歌詞を活かすルバートや間合いを重視したダイナミクス設計が好まれる。器楽演奏でもテーマのカンタービレと丁寧なボイスリーディングが鍵となり、ヴァースを前奏として用いるか、リフレインから入るかで物語性が大きく変わる。

歴史的背景

楽曲は戦後のハリウッド黄金期に生まれ、映画を通じて大衆に浸透した。公開年の第21回アカデミー賞では歌曲賞にノミネートされ、作品の知名度をさらに高めた。作曲家ジュール・スタインはブロードウェイ/映画音楽の第一人者で、本作でも記憶に残る旋律と洗練された職人技を提示している。映画内ではドリス・デイが歌唱し、彼女の初期キャリアを象徴する一曲となった。戦後アメリカでのレコード市場の拡大とラジオ放送の普及も追い風となり、同曲はポピュラーとジャズの垣根を越えて広まっていった。

有名な演奏・録音

映画版でのドリス・デイの歌唱は代表的なアプローチとして広く認知されている。その後、多数のジャズ・ヴォーカリストやビッグバンド、スモール・コンボが取り上げ、バラード主体の解釈から軽快なミディアム・スウィングまで多様な録音が残る。特にヴァースを活かす編曲では、序章から情景を描き、リフレインで感情の頂点へ至るドラマ性が重視される。一方で、放送用・クラブ用の短尺編成ではリフレインから入る簡潔な形も定着しており、両スタイルが現在まで併存している。

現代における評価と影響

現在もアメリカン・ソングブックの定番として、歌手や学生がレパートリーに加える機会が多い。ヴァース付きの形態は物語の導入を音楽で描く教材として有用で、コンサートやスタジオ録音でもオープニングに効果を発揮する。配信時代には映画起源の楽曲再評価が進み、新録音やライブ映像での再提示を通じて次世代の聴き手にも届いている。作品の柔軟な解釈可能性は、ジャズ的再創造の格好の土台となり続けている。

まとめ

「It's Magic」は、映画生まれのポピュラー・ソングでありながら、ヴァースとリフレインの対比が活きる構成によってジャズ・スタンダードとして定着した。作曲の完成度、歌詞のロマンティシズム、編曲適性の広さが相まって、時代や編成を問わず魅力を放つ一曲である。ヴァースを含めた完全版は物語性を強調し、リフレイン開始の簡潔版は即効性をもたらす。用途に応じた選択ができる点も、長く愛される理由と言えるだろう。