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How High The Moon verse付き

  • 作曲: LEWIS MORGAN (US 1)
#スタンダードジャズ
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How High The Moon verse付き - 楽譜サンプル

How High The Moon verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「How High The Moon」は、作曲Morgan Lewis(クレジット表記:LEWIS MORGAN (US 1))、作詞Nancy Hamiltonによる1940年初出のジャズ・スタンダード。ブロードウェイのレヴュー「Two for the Show」で紹介され、のちにスウィング~ビバップ期を通じて定番化した。形式は32小節AABAが基本。タイトルに“verse付き”とある通り、コーラス前に置かれる導入部(ヴァース)が存在し、舞台文脈では物語的な状況提示を担うが、ジャズ演奏では省略されることも多い。

音楽的特徴と演奏スタイル

和声は循環するII–V進行を軸に、半音関係や転調感を織り込むため、ソロはガイドトーンの連結とアルペジオの運用が要点。Aセクションは明快なトニック感と機能和声で展開し、B(ブリッジ)で緊張を高める王道の設計だ。テンポはミディアムからアップまで幅広く、スウィング・フィールでの4ビート、ビバップ的ライン構築、スキャット・ヴォーカルなど多様なアプローチに適応。ヴァースを採用する場合は、語り口のリタルダンドやルバートで色をつけ、コーラスへの推進力を演出する。

歴史的背景

1940年代前半のブロードウェイ由来のナンバーとして登場し、まもなくジャズ・ミュージシャンのレパートリーに定着。ビバップ勃興とともにコード進行の緊密さが注目され、即興の教材としても重宝された。舞台発の楽曲がクラブ・シーンで再解釈される典型例であり、ショー・チューンからジャズ・スタンダードへの橋渡しにおいて重要な役割を担った。

有名な演奏・録音

ヴォーカルではElla Fitzgeraldがスキャットで圧倒的な即興力を示し、楽曲の自由度を広く印象づけた。ギターではLes Paul & Mary Fordの録音がポピュラー面で大成功を収め、世間的認知を飛躍的に高めた。ビバップ界隈では、このコード進行に基づくコンポジションが数多く生まれ、セッション現場の共通言語として機能。ピアノ、サックス、ギターいずれの楽器でも名演が多く、録音史の厚みが曲の価値を裏づけている。

現代における評価と影響

現在もジャズ教育の初中級課題曲として定着し、ガイドトーン・ライン、II–V–Iの処理、ブリッジでのボイスリーディング練習に最適とされる。ヴァースを含めた上演形態は、ショー・チューンとしての出自を再確認させ、プログラム構成に物語性を付与できる点で再評価が進む。セッションではテンポ設定で表情が大きく変わるため、アレンジとインタープレイの妙を試す土台としても重宝されている。

まとめ

ブロードウェイ発の美しいメロディと堅牢なAABA構造を備えた「How High The Moon」は、ジャズの即興美学を映す鏡のような一曲だ。ヴァースの採否で表情が変化し、ヴォーカルから器楽まで幅広い解釈が可能。歴史・理論・実演の三位一体で学べる稀有なスタンダードとして、今後も世代を超えて演奏され続けるだろう。