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Have You Met Miss Jones verse付き

  • 作曲: RODGERS RICHARD, HART LORENZ
#スタンダードジャズ
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Have You Met Miss Jones verse付き - 楽譜サンプル

Have You Met Miss Jones verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Have You Met Miss Jonesは、作曲リチャード・ロジャース、作詞ロレンツ・ハートによる1937年のブロードウェイ・ミュージカル『I’d Rather Be Right』で初披露された楽曲。32小節AABAの典型的フォームで、ジャズ・スタンダードとして広く演奏される。ここで扱う「verse付き」は、本編(リフレイン)前に置かれる導入部を含む版を指し、録音では省略されることも多いが、物語的導入と和声的伏線を担う重要なパートである。テンポは中速スウィングが定番だが、バラードやアップでも演奏され、調性は編成や歌手により可変。

音楽的特徴と演奏スタイル

リフレインは明快な旋律線と機能和声に基づくAセクションに対し、B(ブリッジ)では長三度間を移動する大胆な転調が現れ、即興上の魅力と難所を生む。これが後年「長三度関係の循環」として理論的に言及され、ハーモニー学習の好例となった。verseは語り口調やルバートで導入されることが多く、歌手はハートらしい機知に富む歌詞を活かして間合いとアーティキュレーションを遊ぶ。インストではガイドトーン・ライン、トライアド・ペア、代理ドミナントの活用など多様なアプローチが見られる。

歴史的背景

1930年代後半、ロジャース&ハートはブロードウェイで数々の佳曲を生み、本曲もその一環として誕生。『I’d Rather Be Right』のナンバーとして世に出た後、戦後の録音ブームとともにジャズ・シーンへ定着し、ヴォーカル/インスト双方のレパートリーに広がった。舞台文脈から離れても独立性の高いメロディと特徴的なブリッジ構成が評価され、楽曲単体での普及が進んだ。verseは舞台的性格が強いため省かれる例も多いが、完全版として継承する歌手も少なくない。

有名な演奏・録音

代表例として、エラ・フィッツジェラルド『Rodgers & Hart Song Book』(1956)、フランク・シナトラ(1961年作『Sinatra Swings』収録)が広く知られる。ピアノ・トリオではビル・エヴァンス『Trio 64』の解釈が定番の一つ。ポピュラー分野ではロビー・ウィリアムズが映画『ブリジット・ジョーンズの日記』のために録音し、楽曲名の語呂も相まって新たな層へ届いた。ほかにも多数の歌手・器楽奏者が取り上げ、編曲やテンポ設定の自由度の高さが録音史を豊かにしている。

現代における評価と影響

本曲はジャム・セッションでも頻出のスタンダードで、特にブリッジ部の長三度転調は即興訓練の教材として重宝される。ジャズ理論書やアレンジ教本では、後年の高度な和声手法に先駆する例としてしばしば参照され、レパートリー選定でも「旋律の親しみやすさ」と「和声運動の歯ごたえ」を兼ね備えた楽曲として評価が高い。verse付きの演奏は舞台的ドラマを付加し、コンサートでの構成に奥行きを与える選択肢として再評価が進んでいる。

まとめ

Have You Met Miss Jonesは、キャッチーなAセクションと挑戦的なブリッジ、そして物語性を高めるverseが有機的に結びついた名曲である。1937年の初出以来、歌手と器楽奏者の双方に愛され、教育現場からステージまで息長く演奏されてきた。verse付き版は作品本来の設計を体感できる形であり、楽曲理解と表現幅を広げたい演奏家・リスナーにとって価値が高いアプローチだと言える。