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Flamingo verse付き

  • 作曲: ANDERSON EDMUND,GROUYA THEODOR,GROUYA TED
#スタンダードジャズ
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Flamingo verse付き - 楽譜サンプル

Flamingo verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Flamingoは、作曲Ted Grouya(テオドア/テッド・グルーヤ)、作詞Edmund Andersonによるジャズ・スタンダード。1940年に出版され、デューク・エリントン楽団がハーブ・ジェフリーズを迎えて録音した初期演奏で広く知られるようになった。ここで扱う「verse付き」とは、本編(リフレイン)前に置かれる短い導入歌部分(ヴァース)を含む版を指す。ヴァースは物語的な情景を提示し、曲の世界観へ聴き手を誘う役割を担うが、後年の演奏では省略されることも多い。Flamingoはバラードとして歌われるほか、ラテン・フィールでも親しまれ、ビッグバンドから小編成まで幅広い編成で演奏されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

ヴァースは語り口の強い自由度の高い進行で、和声感をぼかしながらエキゾティックな空気を醸成する。一方のリフレイン部は、滑らかで歌心に富む旋律線と半音階的な装飾が印象的で、長いサステインやレガートを活かした表現が映える。テンポはスロー・バラードからミディアムまで幅があり、4ビートの揺らぎに乗せる解釈に加え、ボレロ/ルンバ系のラテン・グルーヴで彩るアレンジも多い。ヴォーカルは広めの音域とブレス配分、フレーズ末の艶やかなニュアンス作りが要点。管楽器ではアルトサックスやトランペットのカンタービレなソロが好相性で、和声の転調感をとらえたリリカルなアドリブが求められる。

歴史的背景

1940年の出版直後、デューク・エリントン楽団がハーブ・ジェフリーズをフィーチャーして録音し、翌年にかけて広く浸透した。戦後はジャズに限らずR&Bやイージーリスニングの領域にも広がり、同曲のラテン寄りの解釈が拡充。1950年代以降は多様な編成とテンポで再解釈が進み、ヴァースの扱いも演者の美学によって取捨選択されるようになった。映画での顕著な使用は情報不明だが、ラウンジやクラブのレパートリーとして長く定着している。

有名な演奏・録音

代表格はデューク・エリントン楽団 feat. ハーブ・ジェフリーズの録音(1940年)。R&Bサイドからはアール・ボスティックの1951年のヒットが知られ、力強いサックスの歌い回しで新たな層に届いた。さらにチャールズ・ミンガスはアルバム「Tijuana Moods」(録音1957、発売は後年)で独自の色彩感を与え、ハーモニーとリズム処理の自由度を示した。ほかにも数多くのシンガーやサックス奏者が取り上げているが、網羅的なディスコグラフィは情報不明。ヴァースを完全収録したヴォーカル版は相対的に少ないものの、歴史的録音群ではその魅力を確認できる。

現代における評価と影響

Flamingoは、メロディの官能性とラテン・フィールの相性の良さから、現在もライブ定番として息長く演奏されている。ジャズ教育の現場では、ボレロ/ルンバ的グルーヴの導入例として、また歌唱表現やブレス、レガートの実践教材として重宝される。ヴァースを含める構成は曲の物語性を高める手段として再評価され、リスナー側もイントロ的役割以上の意味を見出す傾向がある。ストリーミング時代でも新録が散見され、国境を越えてスタンダードとしての地位を保ち続けている。

まとめ

Flamingoの核心は、哀愁漂う旋律とラテンの香り、そしてヴァースが生む物語的導入にある。初期の名演からモダンな再解釈まで、時代ごとに異なる質感をまといながら、楽曲の普遍性は損なわれない。演奏や鑑賞では、ヴァースをどう扱うか、テンポ設定と音色の艶、フレージングの滑らかさを意識することで、このスタンダードが持つ豊かな表情を一層引き出せるだろう。