A Foggy Day verse付き
- 作曲: GERSHWIN GEORGE,GERSHWIN IRA

A Foggy Day verse付き - 楽譜サンプル
A Foggy Day verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
A Foggy Day(原題: A Foggy Day (In London Town))は、作曲ジョージ・ガーシュウィン、作詞アイラ・ガーシュウィンによる1937年の楽曲。映画『A Damsel in Distress』で初公開され、以後アメリカン・ソングブックを代表するジャズ・スタンダードとなりました。「verse付き」とは、本編のAABA主題に入る前に置かれる語り口の前奏(ヴァース)を含めて演奏・歌唱する版を指します。通常のステージでは省略されやすい一方、ヴァースは物語の情景と心情を提示し、主題への導入として機能します。形式は32小節のAABAが一般的で、歌詞全体の引用は避けられますが、ロンドンの霧と心の陰影を対比させる詩世界が特徴です。
音楽的特徴と演奏スタイル
ヴァースは自由なテンポで始まり、淡い和声進行から主題へ滑らかに接続します。主題はミディアム〜ミディアムスローのスウィングで取り上げられることが多く、32小節AABAの明快な構造に、ガーシュウィンらしいII–V進行や借用和音が織り込まれます。メロディは歌いやすい音域に収まりつつ、フレーズの呼吸でニュアンスが大きく変化。ヴォーカルはレガート主体で、語尾の処理やレイドバックで表情をつけます。器楽では4ビートのウォーキングに乗せ、Aセクションでモチーフ展開、B(ブリッジ)でハーモニーの移ろいを活かしたアドリブが定石。キーはFやE♭など演奏者に合わせて移調されることが一般的です。
歴史的背景
本作は1937年公開のミュージカル映画『A Damsel in Distress』用に書かれ、同年に世に出ました。ジョージ・ガーシュウィンにとって晩年期の仕事に属し、映画音楽とブロードウェイの語法を架橋する作曲技法が凝縮されています。霧の都ロンドンを舞台にした映像文脈と、歌詞が描く内面的な曇り空のメタファーが響き合い、作品の印象を強めました。映画初出後はステージやレコードで独立して取り上げられ、特にジャズ・ミュージシャンの解釈によりレパートリーとして定着していきます。
有名な演奏・録音
映画での初演者として知られるのはフレッド・アステア。以後、エラ・フィッツジェラルドによるガーシュウィン・ソングブック収録の名唱、フランク・シナトラのスウィンギーなアプローチなどが代表的です。器楽では多くのピアノ・トリオやコンボが取り上げ、ミディアム・テンポでの端正なスウィングから、バラード寄りの抒情的解釈まで幅広いヴァリエーションが存在します。ヴァースを前置きしてドラマ性を高めるヴォーカル・アレンジも根強い人気を保っています。
現代における評価と影響
A Foggy Dayはジャム・セッションやライヴの定番で、教育現場でもスタンダード学習の素材として頻用されます。ヴァース付きで演奏すると曲想の理解が深まり、物語性のある導入が可能になるため、コンサートのオープニングやドラマティックなセット構成に適します。多数の録音が存在し、編成もソロ、デュオ、トリオ、ビッグバンドまで柔軟に対応。楽曲の核となるメロディと堅牢なハーモニーが、時代やスタイルを越えて解釈の余地を与え続けています。
まとめ
映画生まれの名曲A Foggy Dayは、物語性とジャズ的即興の両立が魅力です。ヴァースを含めた構成は情景と心理の輪郭を際立たせ、主題のAABAをより説得的に響かせます。歴史性、演奏自由度、受容の広さの三拍子がそろい、現在もレパートリーの中核を占めるスタンダードとして愛され続けています。