Easy Living verse付き
- 作曲: RAINGER RALPH, ROBIN LEO

Easy Living verse付き - 楽譜サンプル
Easy Living verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Ralph Rainger作曲、Leo Robin作詞による1937年の楽曲。パラマウント映画『Easy Living』のために書かれ、その後ジャズ・スタンダードとして広く定着した。「verse付き」は、通常省略されがちな冒頭の導入部(ヴァース)を含む版を指し、物語的な前置きからリフレインへ橋渡しするのが特徴。ヴァースがあることで歌詞の情感と物語性が強まり、楽曲の本来の構成美を体験できる。
音楽的特徴と演奏スタイル
リフレインは典型的な32小節AABA構成。滑らかな旋律線と豊富なツー・ファイヴ、経過和音が調性感をやわらかく変化させる。ヴァースは自由度の高いテンポ運用で語りかけるように歌われ、続くリフレインはバラードからミディアム・スウィングまで幅広く演奏される。声楽では言葉の間(ま)とフレージングの妙、器楽では内声進行や転回形を活かしたソロ展開が映える。
歴史的背景
大恐慌後のハリウッドで、映画音楽が大衆の気分を支える時代に誕生。Rainger & Robinは当時多くの映画歌を手掛け、スクリーン発のポピュラー曲が後にジャズのコア・レパートリーへ移行する流れを象徴する一曲となった。初出映画はミッチェル・ライゼン監督の『Easy Living』(1937)。映画での紹介を起点に、ダンスバンドやラジオを通じて広く知られるようになった。
有名な演奏・録音
ビリー・ホリデイが1937年にテディ・ウィルソン楽団と録音した演奏は、作品の代表的解釈として知られる。柔らかなビブラートと間合いが、楽曲の親密な語り口を際立たせた。その後も、多くの歌手と器楽奏者がレパートリーに取り上げ、バラード解釈からコンボのスウィング、ギターやサックスの抒情的ソロ・ヴァージョンまで多彩に展開している。網羅的な録音一覧は情報不明。
現代における評価と影響
現在も教育現場やジャム・セッションで定番。歌手はヴァースを活かして物語性を強調でき、伴奏者は内声進行や代理和音を工夫して色彩を加える余地が大きい。アレンジャーにとっても、ヴァース有無でドラマトゥルギーを設計しやすい素材として評価される。洗練されたメロディと柔軟なハーモニーは、モダンなリハーモナイズや室内楽的編成にも適応し、時代を超えて生き続けている。
まとめ
映画発の名曲がジャズ・スタンダードへ昇華した好例。ヴァースを含む形は楽曲本来の構成を体感でき、歌詞の情緒とハーモニーの移ろいがより立体的に伝わる。演奏文脈を問わず成熟した表現を引き出す、汎用性と深みを備えた一曲であり、今後も歌手・器楽奏者双方のレパートリーとして愛され続けるだろう。