Do Nothin' Till You Hear From Me verse付き
- 作曲: ELLINGTON DUKE, RUSSELL SIDNEY KEITH

Do Nothin' Till You Hear From Me verse付き - 楽譜サンプル
Do Nothin' Till You Hear From Me verse付き|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Do Nothin' Till You Hear From Me」は、Duke Ellingtonが作曲し、Bob Russell(本名Sidney Keith Russell)が歌詞を付けたジャズ・スタンダード。1940年の器楽曲「Concerto for Cootie」を土台に、1943年に歌詞版として広まった。ここでいう“verse付き”とは、本編のAABAに入る前に置かれる導入部(ヴァース)を含む構成を指す。多くの録音でヴァースは省略されがちだが、上演や一部の歌唱では用いられ、曲の物語性や語り口を補強する重要な役割を果たす。
音楽的特徴と演奏スタイル
コーラスは32小節のAABA構成が一般的で、テンポはバラードからミディアム・スイングまで幅広い。メロディは「Concerto for Cootie」に由来するブルース・フィーリングを湛え、しなやかなレガートと繊細なシンコペーションが要。和声はトライトーンを含むセカンダリー・ドミナントやII–V進行が要所で現れ、歌手・ソリスト双方に解釈の余地を与える。ヴァースは自由なテンポで語るように始まり、リズム・セクションが入って本編に接続する形が典型的。キーは編曲により異なる(情報不明)ものの、歌唱では中庸の音域を保ちやすい調が選ばれることが多い。
歴史的背景
原曲「Concerto for Cootie」は、エリントン楽団の看板トランペッター、クーティ・ウィリアムズのためのフィーチャー楽曲として1940年に発表。戦時下のビッグバンド黄金期、魅力的な旋律にBob Russellが歌詞を付けたことで、1943年に歌ものとして一気に普及した。エリントン楽団のレパートリーとして人気を博し、その後はヴォーカル/インストの両面で広く演奏されるスタンダードへと定着した。
有名な演奏・録音
デューク・エリントン楽団(ヴォーカル:Al Hibbler)による録音は代表例として挙げられる。歌唱ではエラ・フィッツジェラルド、ナット・キング・コール、ニーナ・シモン、トニー・ベネットらが取り上げ、各人の解釈で楽曲の奥行きを提示。器楽ではオスカー・ピーターソンやベン・ウェブスターをはじめ、エリントン作品を得意とするアーティストがしばしばレパートリーに加える。ヴァースの有無は編曲次第で、完全版(ヴァース付き)と本編のみの両方が存在する。
現代における評価と影響
本曲はジャズ教育やセッション現場で頻出するスタンダードで、メロディの歌い回し、ブルージーなニュアンス、和声運用など、多様な学習要素を含む。ヴァースをあえて復権させるアーティストもおり、物語性やドラマを重視したステージングに有効とされる。録音・出版譜ともに広く流通しており、世代を超えて演奏解釈が更新され続けている。
まとめ
「Do Nothin' Till You Hear From Me」は、器楽名作を起点に歌詞が付されて完成したスタンダードで、ヴァースの有無によって表情が一変する。ブルース感覚と洗練を併せ持つ旋律・和声は、歌手にも器楽奏者にも豊かな表現の場を提供し、今日まで定番曲として愛されている。