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But Not For Me verse付き

  • 作曲: GERSHWIN GEORGE
#スタンダードジャズ
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But Not For Me verse付き - 楽譜サンプル

But Not For Me verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「But Not For Me」は作曲ジョージ・ガーシュウィン、作詞アイラ・ガーシュウィンによる楽曲で、1930年のブロードウェイ・ミュージカル『Girl Crazy』で発表された。グレイト・アメリカン・ソングブックを代表するスタンダードで、多くの場合32小節AABA形式のコーラス部に、語り口調の“verse(前口上)”が付く。verseは物語的導入として失恋の心情を予告し、続くコーラスでウィットに富んだ嘆きが展開される。演奏調やテンポは解釈により幅があり、歌ものはバラード〜ミディアム・スウィング、器楽演奏ではミディアム以上で扱われることが多い。

音楽的特徴と演奏スタイル

コーラスは覚えやすい旋律線とクリアなハーモニー進行を持ち、Aセクションは素直な語法で歌詞の洒脱な韻を支える。ブリッジ(B)は和声の推進力が増し、感情の振幅を拡げる。ジャズ演奏ではII–V系の受け渡しや代理和音、トライトーン・サブなどのリハーモナイズも親和性が高い。verse付きの歌唱では、冒頭を自由なテンポで語るように置き、キメで拍に入ってコーラスへ接続する手法が定番。バラードでは余白を生かした間合いと歌詞の明瞭なディクションが要。スウィングではアクセントの置き所とレイドバックで独特の切なさを醸す。

歴史的背景

1930年の『Girl Crazy』は数々の名曲を生んだ作品群の一つで、本曲も初演後に楽譜・レコード・ラジオを通じ広まり、やがてジャズの常用レパートリーとなった。軽妙な言葉遊びと都会的な諦念を同居させるアイラの作詞は、禁酒法時代から大恐慌期の空気を背景に、洗練とアイロニーを同時に提示する。舞台起源の「ショー・チューン」でありながら、汎用性の高い和声と歌い手の表現幅が、世代やジャンルを超えた定着を後押しした。

有名な演奏・録音

ヴォーカルではエラ・フィッツジェラルド『Gershwin Songbook』(1959)や、チェット・ベイカー『Chet Baker Sings』(1954)が定番。映画『Girl Crazy』(1943)ではジュディ・ガーランドが歌唱し、楽曲の知名度をさらに広げた。加えて、映画『恋人たちの予感』(1989)のサウンドトラックではハリー・コニック・ジュニアが取り上げ、現代的アレンジで再注目を集めた。器楽面では多数のピアノ・トリオやサックス・クインテット編成が取り上げ、バラードからミディアム・スウィングまで幅広い解釈が聴ける。

現代における評価と影響

本曲はセッション現場での共通言語として機能し、教育現場の必修曲にも数えられる。verseの有無で物語性やムードが大きく変わるため、同一曲でもアレンジ次第で印象が一変する点が研究・実演の両面で重視される。配信時代においても、新録音やライブ映像が継続的に発表され、歌詞のウィットと普遍的な失恋のテーマが世代横断で共感を呼び続けている。

まとめ

「But Not For Me」は、舞台発のショー・チューンがジャズ・スタンダードへ昇華した典型例。verse付きの構成は物語性を高め、AABAの明快な型は多彩な解釈を許容する。名演も豊富で、歌でも器楽でも表現力を試す格好の題材だ。