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Autumn In New York verse付き

  • 作曲: DUKE VERNON
#スタンダードジャズ
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Autumn In New York verse付き - 楽譜サンプル

Autumn In New York verse付き|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Autumn In New York」は作曲家ヴァーノン・デューク(Vernon Duke)による1934年の楽曲で、ブロードウェイのレビュー「Thumbs Up!」のために書かれた。作詞もデューク自身が手がけ、都会の秋の情景と感傷を詩的に描く。標準的な32小節AABAのリフレインの前に、朗唱風・自由テンポの“ヴァース”が置かれているのが特徴で、多くの録音で省略されがちな一方、作品の情緒を導く重要な序章として評価される。本稿の「verse付き」は、そのヴァースを含めた完全形の演奏・解釈を指す。

音楽的特徴と演奏スタイル

リフレインは滑らかな旋律線と豊かな半音階的進行を備え、セカンダリー・ドミナントなどを軸にした洗練の和声が魅力。AABA構成はバラードにもミディアム・スウィングにも適応し、歌唱ではレガートなフレージングと語り口のコントラストが要。ヴァースはルバート気味に始まり、物語的な導入から主題へ橋渡しする。器楽では内声のボイスリーディングや上層テンションを活かしたアレンジが好まれ、トライトーン・サブなどのリハーモナイズも頻用される。ソロでは情景描写的なダイナミクスと間合いが鍵となる。

歴史的背景

1934年、ニューヨークのショウビジネスが不況期を越えて再活性化する文脈で、都会的洗練と憧憬をテーマに誕生。ブロードウェイ初演後、ラジオやレコードを通じて普及し、1940年代後半から1950年代にかけて多数の歌手・ジャズ奏者に取り上げられてスタンダード化した。英語圏の楽曲ながら、季節と都市の情感を象徴するイメージは国境を越えて共感を呼び、以後ジャズ・レパートリーの中核に位置づけられていく。

有名な演奏・録音

代表例として、フランク・シナトラの歌唱(1949)は広く知られ、都会的な抒情を確立した名演として評価が高い。器楽ではチャーリー・パーカーの“with Strings”による録音(1950)が象徴的で、弦との対話で楽曲の陰影を鮮やかに描き出した。ほかにも多くの歌手やピアニスト、ギタリストが取り上げ、ヴァースを冒頭に置くバラード解釈から、リフレインのみで構成するスウィング寄りのスタイルまで、幅広いバリエーションが存在する。

現代における評価と影響

現在もヴォーカル/インストゥルメンタル双方で頻繁に演奏され、秋のプレイリストやクラブのレパートリーに定着。音大やジャム・セッションの教材曲としても扱われ、AABAの構成理解、情緒表現、リハーモの実践に適した題材として重宝されている。ヴァースを含めるか否かは解釈の分岐点であり、歌詞世界の導入を重視する歌唱では採用例が多い。都市の季節感を喚起する象徴曲として、世代と地域を超えて親しまれている。

まとめ

ブロードウェイ発の「Autumn In New York」は、ヴァースとAABAのリフレインが織りなす物語性と和声の洗練で、ジャズ・スタンダードの定席を築いた。バラードからスウィングまで対応する柔軟さ、歌詞の情景喚起力、名演の蓄積が相まって、今なお新たな解釈を生み続けている。verse付きで聴くことで、曲の本来の設計と叙情をより深く味わえるだろう。