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One Finger Snap

  • 作曲: HANCOCK HERBIE
#コンテンポラリー
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One Finger Snap - 楽譜サンプル

One Finger Snap|楽曲の特徴と歴史

基本情報

One Finger Snapは、ジャズ・ピアニスト/作曲家ハービー・ハンコックによる1964年の作品。初出はBlue Noteレーベルのアルバム『Empyrean Isles』で、編成はフレディ・ハバード(コルネット)、ハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)。歌詞を伴わないインストゥルメンタル楽曲で、以後ジャズ・シーンで広く演奏される定番となった。タイトルは指でスナップを鳴らす身振りに由来するが、楽曲自体は洗練されたポスト・バップの語法に根差している。

音楽的特徴と演奏スタイル

快速テンポのなかで、アクセントの強いテーマとシンコペーションが織り成す推進力が際立つ。鋭い切り返しを含むメロディは、広い音程跳躍と休符を活かした“間”が特徴で、リズム・セクションとホーンのユニゾンによるキメが緊張感を生む。ハーモニーはモーダルな発想と機能和声が交錯し、ソロでは和声中心のアプローチとアウトサイド志向が柔軟に共存。ドラムはポリリズム的な遊動性でフロントを鼓舞し、ベースは堅固なウォーキングからリズミックな変化まで自在に対応する。ピアノのコンピングはスペースを重視しつつ、和声の色彩を機敏に変化させる点が聴きどころ。

歴史的背景

録音当時、ハンコック、カーター、ウィリアムスはマイルス・デイヴィスの第2期クインテットで活動中だった。本作ではサックスの代わりにフレディ・ハバードが参加し、鋭利でエネルギッシュなサウンドを形成。1960年代前半のニューヨークにおけるポスト・バップの革新気運を色濃く映し、同世代の演奏家に強い影響を与えた。

有名な演奏・録音

基準となるのは『Empyrean Isles』に収められたオリジナル録音。以降、ハンコック自身のライブでたびたび再演され、コンボ編成でのジャム・セッションでも取り上げられてきた。教育現場のレパートリーとしても定着し、多数の演奏映像や音源が公開されているが、網羅的な一覧は情報不明。

現代における評価と影響

今日では、ミドル〜ファストのテンポでモダンなインタープレイを学ぶ格好の教材として認知される。テーマのキメ、ハーモニーの拡張性、リズムの流動性という三要素は、現代ジャズの語法を示す実例としてしばしば引用され、若手からベテランまで幅広く演奏され続けている。

まとめ

One Finger Snapは、簡潔な素材から高度な相互作用を引き出す設計が冴えるポスト・バップの名曲。1964年の初演録音は今なお鮮烈で、現代のステージでも新たな解釈を誘発する。インストゥルメンタルゆえの自由度を活かし、各パートが創造的に関わることで魅力が最大化される一曲だ。