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Orbits

  • 作曲: SHORTER WAYNE
#コンテンポラリー
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Orbits - 楽譜サンプル

Orbits|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Orbits」は、サックス奏者ウェイン・ショーター(SHORTER WAYNE)作曲のインストゥルメンタル。初出はマイルス・デイヴィス・クインテットのアルバム「Miles Smiles」(1967年、Columbia)。参加メンバーはマイルス・デイヴィス(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)。歌詞は存在せず、ライブでも器楽曲として演奏された。ショーターの中期を象徴する作品群の一つで、クインテットの革新的アンサンブルが色濃く刻まれている。

音楽的特徴と演奏スタイル

テーマは短い動機の連接と跳躍的なフレーズで構成され、旋回するようなラインが題名を想起させる。コード設計は機能和声に依存せず、モーダルかつオープンな性格が核。ソロでは明確な区切りより相互反応が重視され、ハンコックの含意に富むヴォイシング、カーターの柔軟なベース、ウィリアムスのポリリズムが推進力を生む。いわゆる“time, no changes”アプローチの好例で、テンポは中高速、緊張と解放のダイナミクスがドラマを形成。主旋律の断片を即興内で再提示するモチーフ駆動の語法も特徴的である。

歴史的背景

1960年代半ば、第二期マイルス・クインテットは作曲と即興の境界を解体し、フォームを拡張していった。「Orbits」はその文脈で書かれ、アルバムの冒頭曲として提示されたことで、バンドの新機軸を象徴する役割を担った。ショーター特有の曖昧さと明晰さが同居する筆致は、当時のポスト・バップの潮流を牽引し、以後のジャズ作曲と小編成アンサンブルの思考に広く影響を与えた。

有名な演奏・録音

基準となる録音は「Miles Smiles」収録テイク。以降、同クインテットの公式リリースや発掘ライブ音源でも演奏記録が残る。ショーター作品の中で演奏頻度が突出して高いわけではないが、現代のジャズ・コンボや教育現場のアンサンブルが取り上げる例も見られ、分析や研究の対象として参照されることが多い。

現代における評価と影響

今日、「Orbits」は第二期クインテットの美学を学ぶ教材として高く評価される。固定化されたコード進行に頼らず、各パートの自立と相互作用で構築できることを示し、リズム・セクションの自由度と責任のバランス、モチーフ駆動の即興設計、ダイナミクス制御といった観点で多くの演奏家に示唆を与え続けている。

まとめ

旋回するテーマ、開かれた和声、緻密なインタープレイ——「Orbits」は1960年代モダン・ジャズの核心を凝縮した一曲である。初出録音を出発点に、その音楽的発見は現在も演奏現場と研究の双方で生き続け、ウェイン・ショーターの作曲観とマイルス・クインテットの革新性を端的に物語っている。