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Star-Crossed Lovers

  • 作曲: STRAYHORN BILLY,ELLINGTON DUKE
#スタンダードジャズ
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Star-Crossed Lovers - 楽譜サンプル

Star-Crossed Lovers|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Star-Crossed Loversは、デューク・エリントンとビリー・ストレイホーンの共作によるジャズ・バラード。1957年の組曲『Such Sweet Thunder』に収録され、シェイクスピアの悲恋「ロミオとジュリエット」をテーマに据えた一曲として知られます。繊細な旋律線と流麗なハーモニーを特徴とし、エリントン楽団のアルトサックスを中心に、管楽器同士の呼応が物語性を生む構成。別名「Pretty Girl」として言及されることもありますが、詳細な由来は情報不明。純然たるインストゥルメンタルとして演奏されるのが一般的です。

音楽的特徴と演奏スタイル

テンポは緩やかなバラード。主旋律は歌うように滑らかで、半音階的な装飾や溜めの効いたフレージングが情感を強めます。エリントン流の豊潤なヴォイシングが随所で響き、サックス・セクションやブラスの柔らかな重なりが陰影を形成。アルトサックスのリードに、相対する管が短い応答を返す対話的書法は、恋人たちの心のやり取りを想起させます。ダイナミクスは大振りではなく、微細なニュアンスの推移が聴きどころ。過度なヴィブラートや過剰な装飾を避け、レガート中心で息の長いフレーズを保つ演奏が似合います。

歴史的背景

『Such Sweet Thunder』は、シェイクスピア作品をインスピレーション源にした組曲で、1957年に発表。Star-Crossed Loversはその中で“悲運の恋人たち”を象徴する楽章を担い、劇的な物語性を音色と対話で描き出します。制作において、エリントンはオーケストラ・サウンドの色彩設計を、ストレイホーンは線の美しさと和声感の洗練を提示し、両者の資質が結晶。初出の文脈が明確なため、ジャズの小編成スタンダード群とは一線を画しつつも、後年は独立した楽曲としても親しまれています。

有名な演奏・録音

基準となる音源はエリントン楽団による1957年の『Such Sweet Thunder』収録ヴァージョン。アルトサックスが流麗に旋律を導き、アンサンブルが繊細に支える同録音は、解釈の指標として広く参照されます。その後もエリントン楽団のコンサートや各地のライヴでしばしば取り上げられ、ビッグバンドから小編成アンサンブルまで編成を問わず演奏されてきました。特定の映画やドラマでの使用については情報不明ですが、教育現場やリサイタルでも定番的に選曲されています。

現代における評価と影響

Star-Crossed Loversは、バラード解釈とアンサンブル・バランスの手本として高く評価され、音大やジャズ教育の現場で分析・演奏の題材になることが多い作品です。作曲・編曲両面での完成度が高く、音域配置や声部進行、ダイナミクスの設計など、ジャズ・オーケストレーションの学習素材としても有用。近年は小編成向けの新アレンジやクロスオーバーな室内楽編成でも取り上げられ、静謐で叙情的な音世界は世代やジャンルを超えて支持を広げています。

まとめ

エリントンとストレイホーンの美学が結晶したStar-Crossed Loversは、物語性と抒情を兼ね備えたジャズ・バラードの傑作。初演の文脈に根差しつつ、独立曲としても魅力を放ち続けます。優美な旋律、精緻なヴォイシング、対話的な書法が生む静かな緊張感は、いまなお演奏者と聴き手の想像力をかき立てる存在です。