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アーティスト情報なし

Stuff

  • 作曲: DAVIS MILES
#コンテンポラリー
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Stuff - 楽譜サンプル

Stuff|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Stuff はマイルス・デイヴィス(表記: DAVIS MILES)作曲のインストゥルメンタル。初出は1968年発表のアルバム『Miles in the Sky』で、デイヴィスの“第二期クインテット”(トランペット、テナーサックス、ピアノ/電気ピアノ、ベース/エレクトリック・ベース、ドラム)が演奏。歌詞は存在せず作詞者も情報不明。アルバム内で最も明確に電化の方向性を示すトラックのひとつとされ、以後のサウンド変化を告げる重要作として位置づけられる。

音楽的特徴と演奏スタイル

本作はリフと反復するグルーヴを核に据え、ファンク/ロック的な4ビート外のフィールを強めた作り。エレクトリック・ベースのオスティナートが土台を作り、電気ピアノが浮遊感のある和声を散りばめる。テーマはシンプルなユニゾン風のフレーズで提示され、以降はモーダルな中心を保ちながら、トランペットとテナーサックスを軸にしたソロが展開。ドラムはバックビートやシンコペーションを織り交ぜ、スウィングではなく直線的な推進力を生み出す。全体としてハーモニーの移動よりも質感、ダイナミクス、間合いのコントロールで構築する設計が際立つ。

歴史的背景

1968年のマイルスはアコースティック・ジャズから電化へ舵を切る過渡期にあり、Stuff はその転回点を象徴するトラックである。従来の複雑なコード進行から離れ、ヴァンプ主体のフォームとエレクトリック楽器の質感を導入。これにより、翌年の『In a Silent Way』、続く『Bitches Brew』へと連なるジャズ/ロック横断の文脈が明確化していく。クインテットの緻密なインタープレイは維持しつつも、グルーヴと音色を中心に据える発想が強まった点が当時として新機軸だった。

有名な演奏・録音

代表的な録音はアルバム『Miles in the Sky』に収録されたスタジオ・ヴァージョン。後年のリマスター盤や配信サービスでも広く聴取可能で、作品理解の決定版的参照源となっている。その他の公式なライブ録音やカバーの著名例については情報不明。映画やテレビ等での使用情報も情報不明。

現代における評価と影響

Stuff はジャズが電化とグルーヴを取り込み始めた端緒として、研究・再評価の文脈でしばしば言及される。特に、反復的ベース・パターン上でのモーダル即興、電気ピアノのサウンド・デザイン、ドラムのロック的推進力の統合は、後続のジャズ・ロック/フュージョン形成における重要なプロトタイプとなった。一般的な意味でのジャズ・スタンダード曲目に含まれることは多くないが、マイルスのサウンド変遷を理解するうえで欠かせない一章として位置づけられている。

まとめ

Stuff は、シンプルなリフと強固なグルーヴ、電化による音色の刷新を軸に、クインテットの即興性を新しい文脈へと押し広げた作品である。1968年という転換期を体現し、後年のエレクトリック期へ橋を架けた点で歴史的意義は大きい。まずは『Miles in the Sky』版を起点に、その質感と構造を体験するのが最良の入門となるだろう。