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After The Ball

  • 作曲: HARRIS CHARLES
#洋楽ポップス
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After The Ball - 楽譜サンプル

After The Ball|歌詞の意味と歴史

基本情報

「After The Ball」は、チャールズ・K・ハリス(HARRIS CHARLES)による1891年発表のワルツ調ポピュラー・ソング。作詞・作曲は同一人物で、原題は“After the Ball”。独唱とピアノを中心に、ダンス・バンドや合唱でも広く演奏されてきた。19世紀末のアメリカで爆発的に流行し、楽譜が500万部以上売れたとされる近代ポピュラー音楽初期の大ヒットとして知られる。拍子は3/4、調性や初演者など一部の詳細は情報不明。

歌詞のテーマと意味

物語は、舞踏会のあとに起こるひとつの誤解から始まる。若者が恋人の口づけの場面を目撃し、真相を確かめないまま別れを選ぶ。やがて時が経ち、相手は兄であったことを知るが、取り返しはつかない。華やぎの去った“舞踏会の後”に押し寄せる虚無と悔恨が軸で、嫉妬、沈黙、コミュニケーションの不在が悲劇を生むという道徳的なモチーフを持つ。軽やかなワルツと切ない物語の対比が記憶に残る点が本曲の大きな魅力である。

歴史的背景

本曲はティン・パン・アレー隆盛期の幕開けを象徴する一曲で、家庭のサロンやミュージックホールで歌われた“パーラー・ソング”の系譜に位置づけられる。音盤より楽譜販売が主力だった時代に、ハリスは積極的な宣伝で全国的な需要を喚起し、大量印刷された楽譜が各地へ流通した。結果として“ミリオンセラー”の概念を一般化させ、音楽産業が作曲・出版・興行の連携でヒットを生むモデルの先駆となった。

有名な演奏・映画での使用

19〜20世紀にかけて多くの歌手やダンス・バンドが録音し、アメリカン・ソングの定番として定着した。映像作品では、映画『ショウ・ボート』(1936年)でアイリーン・ダンが劇中歌として披露した例が広く知られ、古き良き時代の雰囲気を象徴する楽曲として幾度も引用されてきた。舞台やリサイタルでも、当時のスタイルを再現するプログラムにたびたび組み込まれている。

現代における評価と影響

「After The Ball」は、物語性の高い歌詞、親しみやすい旋律、そして巨大な楽譜販売実績によって、ポピュラー音楽史の教科書的存在となっている。恋愛と誤解をテーマにした普遍性は時代を超えて共感を呼び、ヴィンテージ音楽やアメリカ音楽史のコンサート、大学講義の教材などで継続的に取り上げられる。ワルツという舞曲形式を、語りの力でドラマに昇華させた点も後続のバラードに影響を与えた。

まとめ

1891年の発表以来、「After The Ball」はティン・パン・アレー草創期の成功モデルを体現し続けてきた。誤解と沈黙が招く悲劇という物語は、華やぎの余韻とともに深い教訓を残し、今日でも多様な解釈で歌い継がれている。歴史的価値、歌詞の普遍性、演奏の広がり—三つの要素が重なって、名曲としての地位を不動のものにしている。