Honky Cat

#洋楽ポップス

Honky Cat - 楽譜サンプル

1972年発表の「Honky Cat」は、アルバム『Honky Château』からのシングル。作曲はエルトン・ジョン、作詞はバーニー・トーピン。仏シャトー・デローヴィルで録音され、米Billboard Hot 100でトップ10入り（最高位8位）を記録した、初期の代表曲である。

歌詞は、田舎育ちの語り手が都会へ出て成功を目指す過程で、周囲から“元の場所へ戻れ”と諭される構図を軸に、出自や階級のステレオタイプに対する反発と自立心を描く。軽快な語り口の裏に、自己選択の自由とアイデンティティの揺らぎが込められている。

制作当時、エルトンはバンド編成を固め、ピアノ主導のポップにアメリカン・ルーツ由来の色彩を導入。ブラスと跳ねるリズム、ホンキー・トンク風のピアノが、新旧のポップ感覚を接続した。プロデュースはガス・ダッジョン。録音環境の解放感もサウンドの伸びやかさに寄与した。

有名な演奏として、エルトン・ジョン自身のコンサートで長年取り上げられてきたことが挙げられる。さらに、伝記映画『ロケットマン』（2019）では、キャリア上昇期を象徴する場面で本曲が用いられ、華やかな編曲で曲の陽性の魅力が再確認された。

今日では、初期の出世作かつステージ映えする楽曲として評価が定着。ベスト盤やプレイリストでも露出が続き、ブラス×ピアノの躍動感は年代を超えて親しみやすい。都市とルーツのせめぎ合いをユーモラスに描く点も、時代を超える普遍性として支持される。

まとめとして、「Honky Cat」は、明快なポップ性とルーツ色の融合、そして自己決定をめぐる物語性によって、エルトン・ジョンの多面的な魅力を凝縮した一曲と言える。歌詞の全体像や詳細解釈には諸説もあるが、核にあるテーマの強度は今なお鮮烈だ。