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Lucille

  • 作曲: BOWLING ROGER DALE
#洋楽ポップス
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Lucille - 楽譜サンプル

Lucille|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Lucille」は、作曲者BOWLING ROGER DALE(ロジャー・D・ボウリング)によるカントリー楽曲で、作詞はロジャー・ボウリングとハル・バイナムの共作。1977年にケニー・ロジャースがシングルとして発表し大ヒットした。所属レーベルはUnited Artists、プロデュースはラリー・バトラー。ロジャースのソロ初期を代表する1曲で、アルバム『Kenny Rogers』期の決定打として知られる。物語性の強い歌詞と温かみのあるボーカル、スティール・ギターやピアノを軸にしたアレンジが特徴で、カントリーとポップを橋渡しするサウンドを備える。

歌詞のテーマと意味

物語はバーで出会う女性“Lucille”と語り手の一夜を中心に展開する。彼女は家庭を捨てて自由を求めるが、そこに夫が現れ、家族や生活の現実を突きつける。物語はスキャンダラスに見えるが、核心は「責任と渇望のせめぎ合い」「孤独と後悔」「他者の痛みへの想像力」にある。語り手は誘惑と良心の間で揺れ動き、Lucilleもまた逃避と自己肯定の葛藤を抱える。聴き手は二人の選択に即断を下すのではなく、背景にある社会・経済的プレッシャーを思い起こすことになる。シンプルな語彙と会話体の進行が、短編小説のようなリアリティを生む。

歴史的背景

1970年代後半のナッシュビルでは、ストリングスや洗練された録音を取り入れる“カントリー・ポップ”が拡大。フォークやロックの要素を柔らかく融合したサウンドが、大衆的な支持を得ていた。「Lucille」はまさにその文脈に位置づけられ、ロジャースの落ち着いた低音と語り口が、カントリーの物語性をポップ市場へ自然に橋渡しした。彼がグループThe First Edition後に確立したソロ像を決定づけ、以降のクロスオーバー・ヒット連発の土台を築いた作品とされる。

有名な演奏・映画での使用

決定的なバージョンはケニー・ロジャースのスタジオ録音で、以後のライヴでも定番曲として頻繁に披露された。カントリー界を中心に多数のカバーが存在するが、代表的カバーの網羅的リストは情報不明。映画やドラマでの明確な使用例についても情報不明。いずれにせよ、物語性の強さゆえにステージ上での語りと歌の往還が映える楽曲で、歌い手の解釈次第でニュアンスが大きく変わる点が魅力だ。

現代における評価と影響

同曲は全米カントリーチャート1位、全米ポップでもトップ10入り、英国シングルチャートでは1位を獲得するなど国際的成功を収めた実績で知られる。ケニー・ロジャースは本作でグラミー賞最優秀男性カントリー・ボーカルを受賞(1978)。以後、彼の代表曲としてラジオやプレイリストで継続的に流通し、ストーリー・ソングの模範例としてしばしば言及される。登場人物の心情に寄り添う対話的作法は、後続のシンガーによるナラティブ志向の楽曲にも影響を与え続けている。

まとめ

「Lucille」は、カントリーの物語性とポップの普遍性を両立させた名曲である。ボウリングとバイナムの筆致、ロジャースの包容力ある歌唱、洗練された録音が相まって、短いドラマを聴き手の胸に鮮やかに刻む。家庭と自由、責任と欲望という普遍的テーマは時代を超えて共感を呼び、今なおステージや音源で新たな解釈を生み出し続けている。