In The Air Tonight
- 作曲: COLLINS PHIL

In The Air Tonight - 楽譜サンプル
In The Air Tonight|歌詞の意味と歴史
基本情報
1981年に発表されたフィル・コリンズのデビュー・ソロ・シングルで、アルバム『Face Value』に収録。作曲・作詞は本人。静かなシンセとリズムボックスが序盤を支配し、後半でゲート・リバーブの効いた生ドラムが轟く構成が象徴的。全英2位、全米19位を記録し、ミュージック・ビデオの陰影に富む映像美も話題になった。
歌詞のテーマと意味
歌詞は離婚をめぐる孤独や怒り、裏切りの感覚を冷ややかに描くとされる。一方で“溺れる事件の目撃談”に基づくという都市伝説が広まったが、コリンズは繰り返し否定し、特定の出来事を歌ったものではないと明言。タイトルは「何かが起こりそうな気配」を示し、反復と間の多い語り口が張りつめた緊張を高める。
歴史的背景
制作はジェネシス活動の合間、私生活の破綻期に進められ、家庭で作ったデモを基にスタジオで発展。ロンドンのタウンハウス・スタジオで、エンジニアのヒュー・パジャムとともに“ゲート・リバーブ”を確立し、80年代ポップの音響美学を決定づけた。簡潔な和声進行と空間的な残響処理が新時代のサウンドを告げた。
有名な演奏・映画での使用
テレビドラマ『Miami Vice』パイロット版で印象的に用いられ、都会的でダークなイメージを決定づけた。映画『ハングオーバー!』ではコミカルな場面で流れ、ドラム・フィルの衝撃が再認識された。さらに2007年の英国Cadbury“Gorilla”CMで再評価の波が起こり、若い世代にも浸透。ライブでは観客が名物フィルに合わせて“エアドラム”するのが定番だ。
現代における評価と影響
多数のカバーや引用、サンプリングの源泉となり、ドラマーやプロデューサーが音作りを学ぶ際のリファレンスとして必ず挙がる存在。配信時代もストリーミング再生は堅調で、SNSでは“ドラム前の溜め”を楽しむリアクション動画が拡散。ミニマルな構成と極端なダイナミクスが、世代を超えて通用する強度を示している。
まとめ
個人的感情の結晶と録音技術の革新が結びついた稀有なポップ・ソング。抑制された導入から解放へ至る設計、象徴的なドラム・フィル、曖昧さを残す言葉が相まって、発表から数十年を経ても色褪せない緊張感を放ち続ける。