It's A Long Way To Tipperary
- 作曲: WILLIAMS HARRY (GB)(NON PROTECTED),JUDGE JACK (NON PROTECTED SHARES)

It's A Long Way To Tipperary - 楽譜サンプル
It's A Long Way To Tipperary|歌詞の意味と歴史
基本情報
「It's A Long Way To Tipperary」は、英国のミュージック・ホールで人気を博したポピュラー・ソング。作曲はJack JudgeとHarry Williamsで、1912年に発表された。曲名の“Tipperary”はアイルランドの地名で、異郷から故郷を想う距離感を象徴する。軽快な行進調のリズムと覚えやすいコーラスが特徴で、舞台から街角まで急速に広まった。初演の正確な会場や初出音源の詳細は情報不明。
歌詞のテーマと意味
主人公は都会暮らしの中で故郷ティペラリーと恋人への想いを募らせる。語りは平易でユーモアも交えつつ、離別の痛み、郷愁、再会への希望という感情を反復するリフレインに託す点が要。戦いや政治を直接描かず、距離と時間の隔たりを日常語で示すため、明るいメロディと内面の切なさが対照を成す。この普遍的な“帰郷”の動機が国境や世代を超えて共感を呼んだ。
歴史的背景
1914年、第一次世界大戦の勃発とともに本曲は英軍兵士の間で行進歌として広まり、戦地への移動や駐屯地で繰り返し歌われた。もとは民間の娯楽曲であり、正式な軍歌ではない点が重要で、兵士個々の心情に寄り添う“ホームソング”として機能した。新聞、歌本、口伝えによる拡散が並行して進み、大衆文化の産物が戦時文化の象徴へと転化する過程を示す代表例となった。
有名な演奏・映画での使用
アイルランド出身のテノール、ジョン・マコーマックによる1914年の録音は特に広く知られ、のちの軍楽隊、合唱団、ポップス歌手まで多様なカバーの基準点となった。映画では『Oh! What a Lovely War』(1969)で印象的に用いられ、本曲の戦時イメージが再文脈化された。その他の具体的な映画・番組での使用については情報不明。
現代における評価と影響
本曲はミュージック・ホール由来のポピュラー音楽が歴史の転換点でどのように機能し得るかを示す教材的作品として、研究・アーカイブで頻繁に参照される。カバーやアレンジは今も途絶えず、行進曲風のビートと覚えやすいコーラスは合唱やブラス編成で再解釈されることが多い。郷愁という普遍的テーマが、記念イベントやコンサートでの選曲理由となることもしばしばある。
まとめ
「It's A Long Way To Tipperary」は、軽快な旋律に普遍的な“帰郷”の情感を宿した1912年の名曲で、第一次世界大戦を通じて行進歌の象徴となった。民間の娯楽曲が歴史と結びつき、記憶の媒体へと変化した稀有な例である。初出の細部や一部の使用例は情報不明ながら、楽曲の文化的影響は現在も確かな存在感を保ち続けている。