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Careless Love

  • 作曲: HANDY WILLIAM C, KOENIG MARTHA E, WILLIAMS SPENCER
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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Careless Love - 楽譜サンプル

Careless Love|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Careless Loveは、アメリカの伝承的なブルース/フォーク起源の歌を基礎に、HANDY WILLIAM C(W.C.ハンディ)、KOENIG MARTHA E、WILLIAMS SPENCERの名義で広く知られるジャズ・スタンダードである。歌詞をもつ楽曲だが、初出年やオリジナルの作詞者は情報不明。20世紀前半のポピュラー音楽の文脈で普及し、ジャズ、ブルース、フォーク、R&Bなど多分野で演奏されてきた。形態は主として12小節ブルースを基調にしつつ、編曲によりイントロ、間奏、エンディングが柔軟に付加される。調やテンポは歌手・編成に応じてさまざまに選ばれるのが特徴だ。

音楽的特徴と演奏スタイル

旋律はブルーノートを含む哀感あるラインが核で、歌と伴奏のコール&レスポンスが成立しやすい。ジャズでは4/4のスウィング・フィールで演奏されることが多く、スローからミディアム・テンポまで幅広い。シンガーが言葉を立たせるため、テンポを微妙に揺らすルバートの導入や、フレーズ終止部でのタメが効果的に用いられる。コンボでは管楽器が簡潔なオブリガートを挿入し、ソロではブルース・フレーズを中心に展開。フォーク/カントリー寄りの解釈では素朴なストロークや分散和音で語り口を支えるなど、編成に応じた解釈の自由度が高い。

歴史的背景

アフリカ系アメリカ人の伝承歌・ブルースの語り口を吸収しつつ、20世紀初頭の舞台音楽やポピュラー出版文化の中で整えられ、広域に流布した。W.C.ハンディらの関与によって出版物や楽譜の形で普及が進み、1920年代のブルース・ブームと録音産業の拡大によりスタンダード化が加速。南部由来の情感を保ちながら、都市のダンス・バンドやジャズ・コンボにも受容され、以後の世代が参照できる共通レパートリーとなった。厳密な成立年は情報不明だが、戦前から広く歌い継がれている。

有名な演奏・録音

代表例として、Bessie Smithによる1925年の録音が広く知られ、ブルース・ヴォーカルの表現規範の一つを示したとされる。その後、ニューオーリンズ系の名手や戦前・戦後のジャズ奏者がこぞって取り上げ、クラリネットやトランペットのオブリガートを伴う演奏も定着。フォーク/ブルース系ではLead Bellyらによる素朴な解釈も聴かれる。2004年にはMadeleine Peyrouxのアルバム『Careless Love』で同曲が収録され、現代的な音像で再評価の一助となった。時代やジャンルを横断して多様な録音が残る。

現代における評価と影響

Careless Loveは、歌詞の普遍的な情感とシンプルな和声構造ゆえに、教育現場やセッションのレパートリーとしても扱いやすい。ブルース・フィール、フレージング、歌伴のダイナミクスを学ぶ格好の教材であり、伴奏者にとっては空間の作り方や間合いの設計が試される。録音技術や編曲の進化により、アコースティックからエレクトリック、伝統主義からモダンな解釈まで適応可能で、現在も活発に演奏され続けている。

まとめ

伝承的なブルースに根差しつつ、出版と録音を通じて普及したCareless Loveは、歌の物語性と即興演奏の余地を兼ね備えた稀有なスタンダードである。作詞者や厳密な初出年は情報不明ながら、Bessie Smith以降の数々の名演がその生命力を裏付ける。シンプルな枠組みの中で各奏者が感情を刻み込める点こそ、本曲が時代を超えて愛される理由だろう。