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Circle
- 作曲: DAVIS MILES

Circle - 楽譜サンプル
Circle|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Circle」は、トランペッターのマイルス・デイヴィス作曲によるジャズのバラード。初出はクインテット作『Miles Smiles』(1967)。録音は1966年ニューヨーク、編成はMiles Davis(tp), Wayne Shorter(ts), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)。歌詞はなく器楽曲。形式や調性の詳細は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
テンポはゆったりとし、簡潔な主題が余白を生かして歌われる。和声は機能和声を基盤にしつつ、停滞と推進のコントラストが強く、場面によってモーダルな感触も覗く。ピアノは疎密のあるヴォイシング、ベースは持続音とウォーキング、ドラムはブラシを交えた繊細な呼吸で支える。抑制されたサックスと気品あるトランペットが会話的に絡み、静謐さの中に緊張が宿る。
歴史的背景
1960年代半ばのセカンド・クインテット期は、ビ・バップ以降の語法を刷新し、リズムや和声運用の自由度を高めた時期。『E.S.P.』(1965)から『Nefertiti』(1967)へ続く探究の只中に『Miles Smiles』が位置し、「Circle」は実験性と抒情性の均衡を示す要となった。アルバムのなかで密度の高い楽曲群に対し、静的な美を提示して全体のドラマを深めている。
有名な演奏・録音
基準演奏は『Miles Smiles』収録のスタジオ・テイクで、クリアな音像と緻密なアンサンブルが解釈の拠り所となる。マイルス、ショーター、ハンコック、カーター、ウィリアムスの相互作用は、本曲の理解に不可欠なリファレンスである。後年のライブ再演や他アーティスト録音の網羅情報は情報不明だが、入門にはオリジナル・テイクが最適といえる。
現代における評価と影響
本曲は、少ない音数で深い表現を生む好例として学習・研究の対象になりやすい。空間の扱い、ダイナミクス、タイムの伸縮、そして会話的インタープレイといった要素は、現代の即興演奏にも通じる語法を提示している。アルバムとともにモダン・ジャズの重要レパートリーとして参照され続け、バラード表現の指標の一つとなっている。
まとめ
抒情と緊張が同居する「Circle」は、セカンド・クインテットの美学を象徴する一篇。静謐な表情の裏に高度な対話が息づく本曲は、時代を超えて聴き継がれる価値を持つ。まずは『Miles Smiles』の演奏から、その精妙な呼吸と音の間合いを味わいたい。