One Hand, One Heart
WEST SIDE STORY
- 作曲: BERNSTEIN LEONARD

One Hand, One Heart - 楽譜サンプル
One Hand, One Heart|作品の特徴と歴史
基本情報
レナード・バーンスタイン作曲、スティーブン・ソンドハイム作詞による『ウエスト・サイド物語』(1957年初演)のナンバー。物語ではトニーとマリアが模擬の結婚式で永遠の愛を誓う場面に歌われる二重唱で、作品全体のドラマを静かに支える中核曲の一つ。1961年の映画版、2021年の新作映画でも重要場面に用いられている。
音楽的特徴と表現
柔らかなテンポに乗る祈りのような旋律と、二人の声部が呼応しながら溶け合う和声が特徴。教会音楽を想起させる厳粛さとブロードウェイ譜の歌心が共存し、フレーズの反復とクレッシェンドで誓いの確かさを積み上げる。華美な装飾よりもテキストの明瞭さと純粋な響きを重んじる設計が印象的。
歴史的背景
『ウエスト・サイド物語』は『ロミオとジュリエット』を1950年代ニューヨークに置き換えたミュージカル。バーンスタイン、若きソンドハイム、演出振付ジェローム・ロビンズが結集し、対立するコミュニティの現実を恋愛譚に折り込んだ。本曲はその中で「私的な誓い」を象徴する静謐な軸を担う。
使用された映画・舞台(該当時)
1961年映画版では礼拝堂を思わせる場面に配置され、主人公の歌唱は一部で吹替歌手が担当した。2021年スティーヴン・スピルバーグ版でも核心のデュエットとして継承され、映像解釈は異なっても親密で霊性を帯びた音楽的性格は変わらない。主要舞台プロダクションのキャスト録音にも収録される定番曲である。
現代における評価と影響
壮大なナンバーに囲まれつつ、本曲は静けさで物語を前進させる書法の手本として評価が高い。結婚式の選曲や合唱・室内楽の編曲で取り上げられることがあり、発声やアンサンブルの教材としても参照される代表的デュエットである。
まとめ
One Hand, One Heartは、派手さではなく誓いの言葉を音楽で支える構築美にこそ価値がある。『ウエスト・サイド物語』の物語的・感情的コアを静かに結晶化し、舞台・映画を超えて聴き手の記憶に残り続ける名曲である。基本情報と背景を押さえれば、その簡素さの奥に潜む精緻なドラマトゥルギーが見えてくる。