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On This Night Of A Thousand Stars

  • 作曲: WEBBER ANDREW LLOYD
#洋楽ポップス
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On This Night Of A Thousand Stars - 楽譜サンプル

On This Night Of A Thousand Stars|歌詞の意味と歴史

基本情報

On This Night Of A Thousand Stars は、Andrew Lloyd Webber作曲、Tim Rice作詞のミュージカル『エビータ(Evita)』に収められたナンバー。初出は1976年のコンセプト・アルバムで、その後1978年ロンドン、1979年ブロードウェイの舞台版でも上演された。劇中ではアルゼンチンの歌手アグスティン・マガルディが歌い、若きエヴァ・デュアルテ(後のエヴァ・ペロン)と運命的に交錯する場面を彩る。楽曲の長さや詳細な調性は情報不明だが、物語の導入部で「魅惑」と「野心」を対比させる機能を担う、重要な情景設定曲である。

歌詞のテーマと意味

歌詞は満天の星の下で贈る甘いセレナーデ。マガルディはロマンティックな言葉で今宵の特別さを讃え、聴き手を陶酔へ導く。だが『エビータ』全体の文脈では、この甘美なムードはエヴァが上昇の足掛かりをつかむ起点として機能し、ロマンスと自己実現の狭間にある駆け引きを暗示する。星空のイメージはきらびやかな名声の象徴であり、同時に束の間の幻想でもある。結果として、この曲は美声による口説きの歌であると同時に、エヴァの野心に火をつける触媒として物語的意味を持つ。

歴史的背景

『エビータ』はアルゼンチンの政治的アイコン、エヴァ・ペロンの生涯を描いた作品。WebberとRiceが『ジーザス・クライスト・スーパースター』に続き、コンセプト・アルバムから舞台化する手法を再び採用した時期の産物である。本曲は1930年代から40年代のサロン的なラテン情緒を思わせるスタイルで書かれ、欧米ミュージカルの文脈に南米の官能と哀愁を導入する役割を担った。政治劇の枠内で、恋愛歌が社会的上昇と結びつく構図は、当時のポップ/ロック・オペラ的感性とも響き合っている。

有名な演奏・映画での使用

1976年のコンセプト・アルバムに収録され、以降、ロンドン/ブロードウェイのオリジナル・キャスト録音や世界各地の公演録音で繰り返し記録されてきた。映画『エビータ』(1996、監督アラン・パーカー)でも使用され、マガルディ役のJimmy Nailが歌唱していることが広く知られる。舞台ではテノール系の歌い手が艶やかなビブラートとレガートを効かせて披露することが多く、コンサートやリサイタルのレパートリーとしても定着している。

現代における評価と影響

本曲は『エビータ』の中で派手な大合唱ではないが、物語の歯車を回す“巧みな導入歌”として評価が高い。歌唱面では中低域の色気、ロマンティックなフレージング、スペイン語圏音楽を想起させるリズム感が試され、オーディションや歌唱指導でもしばしば取り上げられる。キャラクター性が明確なため、演出によっては甘さの中にほろ苦い諧謔やアイロニーを織り込める点も魅力で、再演ごとに新しい解釈が生まれている。

まとめ

On This Night Of A Thousand Stars は、星空のロマンスに包んだ言葉で、権勢と栄光へ向かう物語の扉を開く楽曲である。WebberとRiceの筆致が生む南米風情の香りとドラマ構成の妙が、作品世界へ観客を誘う。舞台・映画・コンサートを通じ、今なお魅力を保つこのナンバーは、『エビータ』の核心—欲望が生む光と影—を優雅に提示する、端正で忘れがたい一曲と言える。