On Wings Of Song 歌の翼
- 作曲: MENDELSSOHN BARTHOLDY FELIX J L

On Wings Of Song 歌の翼 - 楽譜サンプル
On Wings Of Song 歌の翼|作品の特徴と歴史
基本情報
「歌の翼(On Wings of Song/独題: Auf Flügeln des Gesanges)」は、フェリックス・メンデルスゾーンの歌曲集『6つの歌曲 作品34』の第2曲として1834年に発表されたリート。作詞はドイツ詩人ハインリヒ・ハイネで、詩集『歌の本』所収の詩に基づく。原曲の編成は独唱とピアノで、日本では「歌の翼に」として広く親しまれる。穏やかな抒情と流麗な旋律線が特徴で、独唱のレパートリーとしてだけでなく、ピアノ独奏、ヴァイオリンやチェロのための編曲でも頻繁に演奏される。
音楽的特徴と表現
歌は有節形式により各連を同一旋律で歌い進め、詩のイメージを統一感のある音楽で包み込む。伸びやかで歌いやすい旋律は、フレーズの呼吸が自然に計算され、息の流れに寄り添うカンタービレを引き出す。ピアノ伴奏は穏やかな分散和音や揺らぎのあるパターンを主体とし、詩に描かれる空想の旅路や、遠景の自然(花々やさえずり)を淡彩で描写する。過度なドラマを避け、調性と和声運びの穏当さを保ちながら、テクストの「やさしい誘い」を音で照らす点が魅力である。フランツ・リストによる独奏ピアノへの名編曲(S.547)も有名で、原曲の旋律美をヴィルトゥオーゾ的に拡張している。
歴史的背景
1830年代のメンデルスゾーンは管弦楽・室内楽・宗教音楽に並行して歌曲にも力を注ぎ、言葉の韻律と音楽の均整を重んじる作風を確立した。本作の歌詞はハイネのロマン主義的想像世界を背景に、愛する人を歌の翼で理想郷へ誘う情景を描く。19世紀当時のヨーロッパではサロン文化の隆盛とともに、簡素で美しいリートが広く普及し、本作も家庭音楽や教育の現場で人気を博した。
使用された映画・舞台(該当時)
具体的な映画・舞台での使用についての一次情報は情報不明。ただし、歌曲リサイタルや音楽教育、器楽編曲版を含むコンサート・プログラムで頻繁に取り上げられており、合唱や室内楽編成への編曲も広く流通している。
現代における評価と影響
「歌の翼」は、声楽入門からプロの舞台まで愛奏されるリートの定番で、発声・フレージング・言葉の明瞭さを学ぶ教材曲としても重視される。多くの名歌手が録音を残し、透明感のあるテノールやリリック・ソプラノに適性が高い一方、低声も詩情を深く掘り下げられる。器楽界でも、ヴァイオリンやチェロの愛奏小品としてレパートリー化しており、原曲の詩的ニュアンスを音色の変化で再現する解釈が評価される。端正で過度な感情に傾かない美学は、今日でも“歌詞と音楽の理想的均衡”の手本として位置づけられている。
まとめ
ハイネの詩とメンデルスゾーンの旋律が生む静かな陶酔は、世紀を超えて聴き手を魅了し続ける。簡素な構成の中に洗練された語りと響きの均衡が宿り、歌曲の本質的な魅力を体現する作品である。初学者の学習曲としても、熟達者の表現曲としても価値が高く、編曲を含め多様な場で生きる“永遠の名曲”といえる。